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【ことごと綴り】第9回《寒露》10月8日(~10月22日頃まで)
今回は「寒露(かんろ)」のことごとを綴ってみたいと思います。

【二十四節気「寒露」きほんのお話】10月8日(~10月22日頃)
二十四節気のひとつ寒露(かんろ)は秋の節気、立秋、処暑、白露、秋分、寒露、霜降の5番目の節気となります。
寒露とは、晩夏から初秋にかけて野草に宿る冷たい露のこと。
その露が冷たく感じる頃となり本格的な秋の始まりになります。
朝夕の冷え込みも、涼しいというより、肌寒くなってくる頃ですね。
この頃は、大気の状態が安定して空気が澄んだ秋晴れの日が多くなり
夜空には月が明るむ季節へと移り変わります。
「秋の日は釣瓶(つるべ)落とし」という言葉を耳にしたことはありますか。
井戸の水を汲み上げる滑車を使った桶が井戸の底へさっと落ちていく様に例えて、他の季節に比べ秋の夕暮れはあっという間であることを表すことわざです。
実際に6月の日没時刻は19時頃で、その後ゆっくりと暗くなっていきますが、11月になると日没時刻は16時30分頃となるうえに、日没後は急速に暗くなっていくのだそうです。

日が傾いてきたかと思うとすぐに空が茜色になりそして瞬く間に日が沈み暗くなってしまうため、つるべが落ちていくように短い時間に感じられるのですね。
【寒露の七十二候】
ツバメが南国へ去った後に、北国から冬鳥の鴈たちがV字の編隊を組んでやってきます。
桜と並んで日本を代表する花である菊の花が咲き始め、秋の虫が戸口のそばまで寄ってきて哀愁たっぷりに鳴き始める頃です。
初候:鴻雁来(こうがんきたる) 10月8日〜10月13日頃
次候:菊花開(きくのはなひらく) 10月14日〜10月18日頃
末候:蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり) 10月19日〜10月22日頃
(※七十二候の詳細はこちらをご覧ください。)
〈旬の食材Pick up①山芋〉

実は山芋という特定の品種はなく、長芋や大和芋、いちょういもといった「ヤマノイモ科」に属する芋類を総称して「山芋」「やまのいも」と呼びます。
それぞれ厳密には別種ではありますが、実情は混同されていることが多いようです。
<自然薯(じねんじょ)>
日本の自生種で天然の物や栽培物もあります。細長く、山芋の中では最も粘りと旨みが濃いとされ、山菜の王と言われています。短形自然薯と呼ばれる塊状になるものもあります。
<長芋>
水分が多く粘り気は少なめで淡白な味わいです。
<つくねいも>
伊勢芋や丹波山の芋など、ゲンコツ型になっているものが多く、粘りが強く旨味が濃いです。
地域によって大和芋とも呼ばれています。
<いちょういも>
いちょうの葉のような平たく広がった形で色は白っぽいです。長芋より粘りが強く、上品な甘みがあります。
こちらも地域によって大和芋とも呼ばれています。
<だいじょ>
沖縄山の芋や台湾山の芋など大型になるものが多いです。
山芋は主に、秋掘りのものと春掘りのものがあります。
本来の旬は晩秋で、秋を迎えて葉が自然に枯れてから掘り出すそうです。
その時期に掘り出さずにそのまま越冬させて、4~5月に掘り出すものが2回目の旬の『春掘り』です。
ですから、旬は10~3月ですが、市場には通年で出回っています。
春掘りのものは、熟成された甘みやコクが味わえるので、すりおろしてトロロやてんぷらなどに向きます。
秋掘りのものは細切りにしてそのまま生でいただくのに向いているそうです。
山芋は、生で食べられる世界でも珍しい芋なので、シャキシャキしてぬるぬるとした独特の触感を楽しめますね。
山芋はでんぷんが主成分です。
強力なでんぷん分解酵素のアミラーゼが含まれているので、消化を助けます。また、粘り成分が粘膜をうるおし、保護し、たんぱく質の消化、吸収を高めるはたらきがあります。ビタミンB1、Cのほか、食物繊維やカリウムも豊富です。
山芋には「ディオスコリン」というタンパク質成分が含まれており、これにはAソ連型、A香港型、B型のインフルエンザウィルスの活性を抑える効果があることが判明しているそうです。
山芋が人に及ぼすアレルギーには2つのタイプがあります。
1つはIgE抗体が引き起こすアレルギーによるもの、もう1つは山芋に含まれるシュウ酸カルシウムの針状の結晶が、直接皮膚を刺激して起きるものです。
山芋の皮を剥いたりすると手がかゆくなる事がありますが、これは上記の2つ目、シュウ酸カルシウムの結晶が皮膚のうすい毛穴などに入って反応をおこすことによって起こるものです。
店頭で選ぶ時は、皮が薄くてハリがあり、表面に傷や斑点がなくきれいなものを選びましょう。
ひげ根やひげ根の跡が多いものの方が、粘りが強いといわれています。
また、手に持った時にずっしりと重みを感じるものを選びましょう。
表面に黒っぽいシミが出ている物や、傷があるものは避けてくださいね。
スーパーなどではカットされてパックに入れられたものもよく見かけますね。
その場合は、切り口が白くみずみずしいもので、なるべく太い物を選びましょう。
山芋は乾燥だけでなく、光や水気にも弱いので、なるべく早めに使いきりましょう。
保存する場合は、新聞紙に包んで風通しのよい冷暗所に置いておくようにすれば寒い時期であれば、1カ月以上保存できます。
冬季以外は、さらにポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。
カットされたものは、切り口が空気に触れていると乾燥するとともに酸化が進んでしまうので、ラップでぴったりと包んで冷蔵庫へ入れておきましょう。1週間~10日程度は持ちます。
山芋は皮の下にあくがあるので、水洗いしたら厚めに皮をむきましょう。
そして山芋がかぶるくらいの水に酢を1、2滴加え、10分ほどつけましょう。酢水につけると、変色だけでなく、ぬめりによるかゆみも防ぐことができます。
山芋を冷凍保存する場合は、千切りやすりおろしたとろろ状にして、冷凍用の保存袋に入れ、薄い板状にして冷凍しておくと必要な分だけ割って使えるので便利です。
使う際は自然解凍しないと、とろろの味わいが失われてしまうので注意してください。
皮を剥いて丸のまま冷凍する方法もあります。
その場合食べる際に凍った状態のまますりおろし、残りはそのまままた冷凍しておくことができます。
すりおろすと、アミラーゼのはたらきが活発になるので、とろろは栄養的にもすぐれた食べ方です。
とろろ、酢の物、煮物のほかにも、炒め物や焼き物も美味しいですね。
〈旬の食材Pick up②松茸〉

松茸の旬はもちろん秋です。
国内産はおよそ9月から10月にかけて、北海道に始まり岩手、長野、京都、広島、岡山、山口と秋の訪れとともに南 下していきます。
松茸は主に比較的日当たりのいいアカマツの林に生えますが、雨量や気温や湿度などの条件が揃わないかぎり姿を現すことはありません。生育条件が厳しいのです。
しめじや椎茸のように人工栽培する事が難しく、今なお、自然発生している物を採取し出荷されているため、非常に高価なきのことなっています。
その時季にしか味わうことができないということが、いつまでも季節感を失わない理由のひとつといえるでしょう。
香りの成分はマツタケオールと呼ばれ、松茸の独特の特徴となっています。
松茸の仲間は数種類ありますが、どれも食用になり、毒をもつものはありません。なので、松茸の香りがするきのこは基本的に食べて大丈夫と言う事になるのだそうです。
この松茸ですが、好んで食べるのは日本人くらいのようで、海外ではこの香りが逆に臭いと感じられとか。
味覚や嗅覚、食し方の違いは、食材を調べているとたびたび出てきますが、とても興味深いですよね。
松茸をはじめきのこ類にはβ-グルカンをはじめ食物繊維が沢山含まれています。
食物繊維には腸内環境を整え、便秘の解消に役立つほか、有害な成分を排出するのに役立つとされています。
店頭にて選ぶ際は、傘の開きが5分までのもの、弾力があるものがおすすめです。
傘が開ききっているものでも、鮮度が良ければ香りが強いものが多いので、松茸ご飯などにするなら価格も低めなのでお勧めです。
傘の裏のひだが黒ずんでいるものは香りが抜けている事が多いので避けた方が良いでしょう。
鮮度が命な松茸。
鮮度が落ちると香りが飛んでしまうので、手に入ったらその日に食べるのがおすすめです。
翌日くらいまで保存する場合は、松茸は水分を苦手とするので、乾いた新聞紙やキッチンペーパーで包み、密閉袋に入れてから冷蔵庫で保管しましょう。
使う際には、土付きの部分を、鉛筆の芯を削るように薄くそぎ落とし、表面は濡れたふきんなどで優しく拭きとるようにします。
もし、やむを得ず長期保存する場合は、スライスしてから冷凍すると良いですよ。
ただ、残念ながら香りは抜けてしまいます。
松茸ご飯は松茸の代表的な食べ方ですね。少し歯触りを感じられるよう、あまり薄くし過ぎない事がポイントです。
松茸を丸まま、出来れば炭火で(魚焼き用グリルでも美味しく焼くことができます。)素焼きして焼きあがったものを手で裂くようにしてほぐし、醤油やスダチを絞れば酒の肴に、季節感たっぷりの贅沢な一品です。
澄まし汁の具としても、香り、味を堪能できます。
〈旬の食材Pick up③落花生〉

落花生(らっかせい)とは南米が原産とされるマメ科ラッカセイ属の一年草です。
東アジアを経由して、江戸時代に日本に持ち込まれたと言われています。
南京豆(ナンキンマメ)とも呼ばれてきましたが殻の中に実が入っており、日本ではサヤのままのものを「落花生」や「南京豆」と呼び、この中の実だけのものをピーナッツと呼ぶ傾向にあります。
ナッツに分類されることが多いので、木になる果実のイメージがあるかもしれませんが、落花生は地中に出来ます。
普通の豆は花の付け根が膨らんできますが、落花生は子房柄と呼ばれる一本の蔓が花托の脇から伸びて地面にもぐっていきます。その先が膨らんで殻付きの実を実らせます。
その様子から「落花生(花が地面に落ちるようにして実を付ける)」と名付けられたようです。
落花生は、炒ってあったり、茹でてあったり、乾燥してたりするので旬が何時なのかわかりにくい食材のひとつですよね。
品種にもよりますが10月中旬~11月下旬にかけてが落花生の旬と言われてます。 落花生にも新豆があり旬の時期に収穫された新豆は香りが抜群にいいです。
落花生の品種によっても新豆の時期は異なり収穫後、乾燥させる必要がない品種で有名な「郷の香」「おおまさり」などは9月初旬頃から市場に出回ります。
現在、国内の落花生流通量は、全体の9割が外国産で、国内産は約1割程度になってます。 国内産の約8割が千葉県で生産されています。
落花生にはオレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれいます。
この不飽和脂肪酸にはコレステロールを抑制する作用があり、肥満防止に役立つとされています。
ですが、落花生は非常にカロリーが高く、100gあたり生の未熟豆でも295kcal、乾燥させたものだと562kcalも含まれています。
くれぐれも食べすぎには注意しましょう。
何ごともほどほどということですね。
抗酸化力が強く若返りのビタミンといわれているビタミンEが非常に沢山含まれています。
これには活性酸素を抑え体内の不飽和脂肪酸の酸化を防ぐ働きがあるので、動脈硬化や心筋梗塞などの生活習慣病の予防に役立っていると考えられています。 ビタミンEはこのほかにも、血管を酸化から守り、血行を良くする働きもあると言われています。
落花生はナイアシンの含有量が野菜の中ではトップクラスです。
このナイアシンはアルコールの分解に対する補酵素の働きをはじめ、分解後に生じるアセトアルデヒトという二日酔いを起こす成分の分解を助ける補酵素の働きもあります。
お酒のアテにいただくことは理にかなっているということですね。
他にも、カリウムやマグネシウム、リン、鉄など身体にとって欠かせないミネラルをバランスよく豊富に含んでいて、タンパク質や食物繊維も豊富です。
落花生は品種によって向いた食べ方が違います。煎ったほう美味しい「千葉半立」や「ナカテユタカ」に対し、「さとのか」や「おおまさり」などは茹でたほうが美味しい品種なので、用途に合わせて選びましょう。
また、生や茹でたものよりも、煎った方が成分は凝縮されて、栄養価が高まるともいわれています。特にナイアシンや食物繊維は倍増するとか。
落花生の見極めは正直素人目にはなかなか難しいそうです。
なぜなら、一般的な果実のように、実が十分に膨らんでたっぷり詰まっている方が美味しいわけではないのだそうです。
落花生には収穫適期というものがあり、それを過ぎて更に実が充実してしまったものはかえって風味が落ち、美味しくなくなるとか。
実は丸く太りすぎたものではなく、やや細長いピーナッツの形をしたものが美味しいそうです。
落花生には脂肪分が多く含まれており、酸化しやすく、一旦酸化してしまった物は美味しく食べられなくなってしまいます。
保存するときは密封容器などに入れ、冷蔵庫に入れて、なるべく早く食べるようにしましょう。
また、サヤから取り出して密封容器に入れてもいいでしょう。
落花生を冷凍する場合はサヤごと塩茹でにし、サヤごと、または剥き実にして小分けし冷凍しておきます。
解凍は自然解凍か、電子レンジにかけます。
落花生は生では食べられないので、サヤ付きのまま炒るか茹でるかですが生の落花生を茹でる場合はサヤごと茹でて下さい。
大きめの鍋に多めの水を張り、水に対して3%ほどの塩を加えて沸騰させます。
沸騰しているところにサヤごとの落花生を投入し、落花生の大きさにもよりますが40分~50分程茹でます。
30分過ぎた辺りから時々1つ取り出して硬さを見ながら茹で時間を加減していけば、失敗を防ぐことができます。 茹で上がったらザルに上げ、そのまま冷まします。