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【ことごと綴り】第18回《雨水》2月19日(~3月4日頃まで)
今回は「雨水(うすい)」のことごとを綴ってみたいと思います。

春の節気、立春、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨の2番目の節気です。
地上にもいよいよ陽気が発生して雪や氷は解けて、雨や水になります。
雪解け水が大地や田畑を潤し、川や湖に張っていた氷も水に戻り、ようやく春の足音が聞こえ始めます。
この時期から春にかけて降る雨は「養花雨 (ようかう)」や「催花雨 (さいかう)」と呼ばれ、梅や桜など春の花の開花をうながすと言われています。
こうした土や水が動き始める雨水は、昔から農業の準備を始める目安とされてきたのです。
大地が目覚め、潤い始めると水蒸気が立ち上り、霞がたなびき始めます。
草木も芽吹いてまだ顔を出したばかりの柔らかな緑が目立つようになります。
この季節になると春の鼓動を身近に感じることができるのではないでしょうか。
【立春の七十二候】
降っていた雪がしっとりとした春の雨に変わり、凍てついた大地もゆっくりと潤い始めます。 春の雨で潤い匂い立つ大地や、陽射しにとけた雪でぬかるみが多くなる頃でもあります。 春霞がたなびき始め山野の情景に趣が加わり始め、だんだんと春めき、暖かい日差しに誘われるかのように、地面や木々の枝々から萌黄色の小さな命が一斉に芽吹き始めます。
立春の《七十二候》は以下です。
・初候:土脉潤起 (つちのしょううるおいおこる) 2月19日〜2月23日頃
・次候:霞始靆 (かすみはじめてたなびく) 2月24日〜2月28日頃
・末候:草木萌動 (そうもくめばえいずる) 3月1日〜3月4日頃
(※七十二候の詳細はこちらをご覧ください。)
【旬の食材】
〈旬の食材Pick up①わかめ〉

わかめは、チガイソ科ワカメ属の1年草の海藻です。
日本では、古くから食用として利用されており、乾燥わかめや塩蔵わかめなど、一年中手に入るなじみのある海藻ですが、深さ3~10mほどの海の中で生育していて、冬から春にかけて生長し、3~6月頃の春に旬を迎える海藻です。
主な産地は岩手県や宮城県の三陸、神奈川県や徳島県です。
生わかめは日持ちしないため、流通に乗るのも春の収穫時期に限られます。
わかめは塩蔵わかめやカットわかめとして1年中食べられるので、普段わかめの旬を意識することはあまりないかもしれません。ですが、生わかめの風味は格別です。
わかめは胞子で繁殖する海藻なのをご存知ですか?
生長するにつれてわかめの根元には、胞子を作る胞子葉(ほうしよう)ができます。この胞子葉はヒダが重なった形をしていて、めかぶと呼ばれています。
胞子は配偶子(はいぐうし)と呼ばれ、わかめには雌性(しせい)配偶子、雄性(ゆうせい)配偶子があり、それぞれ海底に付着し、休眠しながら夏を越します。
水温が下がり、日が短くなる秋になると、配偶子から卵と精子が作られ、これらが受精すると、発芽して芽胞体(がほうたい)となり、生長して1~2mほどの一般的に知られるわかめの姿になるのです。
そのころには根元にめかぶができていて、1年のサイクルを繰り返すというわけです。
ちなみに流通しているわかめのほとんどは養殖物。
国産わかめのうち天然物は2%から5%程度とされています。
とはいえ、養殖わかめといっても海で栽培されているものがほとんど。
養殖わかめも天然わかめも波に揉まれて育つことに変わりはありません。
わかめの天然物は確かに貴重で美味しいものの、養殖わかめも美味しさでは決して負けません。
わかめは食べる部分により呼び名が異なります。
【わかめ】 葉わかめとも呼ばれる、一般的にわかめと呼ばれる部分です。葉体と表現されることもあり、柔らかく味噌汁や酢の物などに向いています。

【茎わかめ】 中芯とも呼ばれる、根元から葉の部分への中心部で、わかめの茎部分です。この茎のまわりにわかめが付いています。コリコリとした歯ごたえが食感で、炒め物やサラダなどに向いています。

【めかぶ】 わかめの根元の部分で、わかめのミミとも呼ばれます。ミネラル豊富で、ネバネバとした食感が特徴です。
また、わかめにはさまざまな加工品があります。

【生わかめ】 旬の時期にしか出回らないわかめ。加熱前は濃い茶色で、お湯にくぐらせると鮮やかな緑色になりますが、多くは一度湯通しして売られています。食感がよく、わかめしゃぶしゃぶやわかめの刺身などがおすすめです。

【塩蔵わかめ】 一年中出回っている、濃い緑色のわかめ。収穫したものを湯通ししてよく冷やし、塩を加えて脱水したもの。乾燥わかめより柔らかいのが特徴です。使用する際は水で戻して、刺身やサラダなどに利用するのがおすすめです。

【乾燥わかめ】 一年中出回っている、濃い緑色のわかめ。湯通しした塩蔵わかめをカットし、乾燥させたもの。塩抜き不要で手軽に使えるのが特徴です。さらに常温で保管でき、日持ちするのも利点。味噌汁の具材やわかめごはんなどにおすすめです。
乾燥わかめはたっぷりの水へ浸けて5~6分置いて戻し、ザルで水を切ってから利用します。
また、汁物へ使う場合は、直接汁に入れて1~2分煮ると戻ります。
長く水に浸けるとヌメリがでるため、食べる直前に加えましょう。
乾燥タイプのカットわかめは、水で戻すと12倍程度に膨らむといわれています。カットわかめ1gを水で戻すと12gになるということになりますので、使用料にご注意くださいね。
わかめをはじめとする海藻類は「ミネラルの宝庫」といわれており、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムといったミネラル類、βカロテンやビタミンKといったビタミン類、それに食物繊維を多く含んでいます。
食物繊維は100gあたり39.2g含んでいるそうで、特に多いのが、わかめのネバネバの正体でもある「アルギン酸」と呼ばれるものです。アルギン酸は水溶性食物繊維の一種になります。
また、微量ミネラルといわれる鉄分、亜鉛、ヨウ素などの含有量も多いです。
ちなみに、よく「わかめを食べると髪の毛がきれいになる、髪の毛が増える」といわれることがありますが、これは、わかめにミネラルが多いこと、真っ黒な見た目をしていることなどが関係していると考えられます。わたしも子供の頃によく親から言われていたことを思い出しました。
ところが!
現在のところ「わかめが髪の毛に効果的である」という証拠はないのだそうです。
店頭で選ぶ際には、肉厚で弾力のあるもの、色が濃い緑で、黒ずんでいないものにしましょう。
通常、生わかめは冷蔵保存が基本ですが、長期保存する場合は、冷凍保存をするのがおすすめです。
生わかめをさっとお湯にくぐらせる程度で茹でたら、使いやすい大きさにカットして小分けし、フリーザーパックなどの密閉可能な袋に入れて冷凍庫で保存すると、調理する際に使いやすくなります。冷凍であれば2ヶ月から3ヵ月は日持ちします。
わかめは、どのレシピでも戻しすぎ、加熱しすぎに注意します。
戻しすぎるとわかめの食感が柔らかくなりすぎるためです。
わかめ特有のぬめりは栄養素のなかのひとつ、食物繊維のアルギン酸カリウムです。
ぬめりを取りすぎると栄養が失われてしまうので、水洗いは軽くにとどめましょう。
〈旬の食材Pick up②菜の花〉

菜の花(なのはな)は「なばな」や「花菜」とも呼ばれ、アブラナの野菜です。
やわらかい蕾と、茎、葉を食べる花野菜で、独特のほろ苦さが魅力ですが、ゆでると甘味が出てお浸しや和え物などにするとおいしい食材です。
食用、油用、鑑賞用の3つの種類があり、食用の 「菜の花」として店頭に並んでいるものの中には、実は様々なアブラナの品種があります。「菜の花」「菜花」「花菜」は、そうしたアブラナの花芽の総称として使われています。
東京の伝統野菜「江戸東京野菜」のひとつとして数えられています。
「のらぼうな」と呼ばれ、東京の西部を中心に江戸時代から栽培が始まりました。
花茎と若葉が軟らかく、一般的な菜の花よりも苦みが少ないです。
菜の花は本来2月頃から3月にかけての春が旬ですが、春一番の季節を運ぶ食材として料亭などの需要にあわせ、京野菜として知られる「寒咲花菜」の様に、12月頃から出始めるものもあります。
菜の花に含まれている栄養成分のなかでも注目すべきものは、β-カロテン、カルシウム、ビタミンKの3つです。
そのほかにも、カロテン、ビタミンC、B1、B2、葉酸、カルシウム、鉄分などのビタミン類やミネラル類が豊富です。
ビタミンCの含有量は野菜の中でトップクラスです。
花を咲かせる前の菜の花は、植物が生長するために必要な栄養分をたくさん含んでいるので、栄養が豊富なのですね。ありがたくいただきましょう。
菜の花を「辛い」と感じる人もいるかもしれませんね。
この辛味はイソチオシアネートという成分によるものだそうで、強い抗酸化作用があり、免疫力を高め、がんを予防する効果も期待されています。
菜の花を選ぶときは、やわらかくて張りがある葉と茎を持ち、切り口がみずみずしいものを探すのがおすすめです。鮮度が落ちたものは、乾燥して切り口が白っぽくなり空洞ができます。 さらに、閉じたつぼみが小さく締まっているものがよいですね。花が開いたものは苦味が強くなって食感も悪くなります。
保存をする際は、まず、束ねたテープなどは必ず外しましょう。
菜花類はむきだしで置いておくとすぐにしなびてしまいます。湿らせたキッチンペーパーで包めば、野菜室で2~3日保存できます。
その際、なるべく本来あった状態、根の部分を下にして立てて入れておくようにすると、もちがよく、茎が曲がったりしません。
あまりお勧めはしませんが、大量にある場合などは冷凍も可能です。
その場合は生のままではなく、さっと固めにゆでてから小分けして冷凍します。
使う時は自然解凍します。おひたしやあえ物などにお使いください。
茹で方は、軽く塩をした熱湯で下茹でし、冷水にとります。
塩の分量はそれほど神経質にならなくても良いですが、2%程、水1Lに対して20g程が良いです。
多くの方がたっぷりの水にほんの一つまみほど入れていらっしゃるのですが、それではあまり意味はありません。また、すぐに食べるのであれば塩は入れなくても大丈夫です。
茹で時間は30秒位からせいぜい1分程度です。色と食感を残すよう茹で過ぎたり、冷水にさらしすぎたりしないよう注意してくださいね。
独特のほろ苦さをいかして、生やおひたしでも美味しくいただけますが、βカロテンが豊富なので、油で炒めると効率よく摂取できます。
豚肉やベーコン、ごまなど、油脂分があって香りの強いものとの相性も抜群です。
揚げ物やパスタなどにもチャレンジしてみてください。
〈旬の食材Pick up③キャベツ〉

キャベツは、古代ギリシャ時代から食べられていた最古の野菜のひとつです。
キャベツはブロッコリーやカリフラワーなどと同じアブラナ科アブラナ属の多年草で、その祖先はその薬用効果の大きさでしばしば話題になる、青汁の原料としておなじみの「ケール」です。ケールの葉が変化し、結球したものが現在のキャベツです。
調理用途の広さから人気が高まり、ダイコンに次いで生産量の多い野菜なのだそうです。
1年中、栽培されていますが、キャベツの種類が出荷時期によって分類されていることをご存じですか?
よく知られているのが、秋ごろに種をまき4~6月に収穫する春キャベツ、夏に種をまき11~3月に食べごろを迎える冬キャベツです。
収穫の時期だけでなく、生産地も味わいも異なります。
冬に収穫される冬キャベツは、愛知県や千葉県が主な生産地で、11月頃から2月頃までが旬です。
春に収穫される春キャベツは、千葉県や神奈川県、九州地方で栽培されています。 夏に収穫される高原キャベツ(夏キャベツ)は、群馬県、長野、北海道をはじめ東北で作られる高冷地で生産されるキャベツを言います。
キャベツは品を替え産地を替えながらほぼ周年美味しい物が出回ります。
強いて言うなら、秋に夏物と冬物の切り替え時に品薄になる事がしばしばあるそうです。

↑冬キャベツ
全体の形は扁平で、内部は白く、葉はかたく巻かれている。葉1枚1枚がしっかりしてかため。加熱しても煮崩れしにくい。

↑春キャベツ
全体は丸い球形で内部は黄緑色をしていて、葉の巻きがゆるい。葉はやわらかめで、みずみずしい。サラダなど、生食に適している。
3月から5月ごろにかけて、スーパーでも頻繁に見かけるようになる春キャベツ。やわらかくて甘みがあっておいしいですよね。
ビタミンUが含まれていることが特徴的です。
ビタミンUは、キャベツから発見されたビタミン様物質で「キャベジン」とも言われ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの胃腸障害を予防・改善する働きがあります。
また、大根に含まれているジアスターゼもキャベツの方が多いそうです。ジアスターゼはでんぷん分解酵素で、消化を助け、胃酸過多、胃もたれや、胸やけなどに効果があるそうです。
トンカツにはキャベツの千切りが良く合いますね。
この組み合わせで、しっかりとキャベツを食べる事でトンカツの脂っぽさで胸やけを起こす事も少なくなります。
胃が弱っている時には積極的にキャベツを食べるようにすると胃が楽に感じますよ。