6月になりましたね。
今月のことごと綴りをお届けします。
“伝統を受け継ぐ”というとなんとなく重たい心持ちになりますが、暮らしの中で人から人へ自然と繋いできたというものも少なくありません。
先人たちの祈りや願いや暮らしの中の工夫、そして楽しみがそこにはあります。
これからの時間の流れの中にも、それらが無理なく続き、人の営みに彩りを添えてくれたらと思います。
6月 【和風月名 水無月】
生き物たちに恵みをもたらす長雨がふりそそぎ、草木はどんどん色濃くなってゆきます。
この頃には、梅雨入り宣言が届き始め、日々の暮らしの中では、湿気や雨とのせめぎ合いが少し煩わしくもありますね。
でも、水不足になりがちな真夏の前に大地を潤してくれる恵みの雨でもあります。
小さい頃、新しい傘や長靴を買ってもらうと、嬉しくて雨が待ち遠しかったことはありませんか?
大人になっても、好きな柄の傘や新しいレインシューズなどは気分があがりますね。
お気に入りの雨対策グッズを見つけてみたり、水滴がしたたる紫陽花の姿を間近で愛でてみたり、香り高い梅しごとをしたり、春と夏をつなぐこの季節ならではの感覚も楽しんでいきましょう!
<6月のならわし>
・6月1日
衣替え
・6月5日
芒種(ぼうしゅ)~二十四節気
・6月11日
入梅(にゅうばい)
・6月21日
夏至(げし)~二十四節気
・6月30日
夏越の祓(なごしのはらえ)
・6月下旬~8月上旬
暑気払い
※それぞれのならわしの詳細はこちらをご覧ください。
<旬の野菜>
新生姜・夏大根・隠元豆・苦瓜・胡瓜・玉葱・茗荷(みょうが)・ズッキーニ
<旬の魚介類>
鮎・舌平目・鮑・車海老・かんぱち・平政・真だこ・縞鯵
<旬の果物>
さくらんぼ・枇杷・杏子・パパイヤ・ブルーベリー
<季節の草花>
紫陽花・くちなし・昼顔・橘・姫百合・あやめ・花菖蒲・梅の実・枇杷・柘榴(ざくろ)
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今月の旬の食材
『山椒(さんしょう)』
「山椒」はミカン科の落葉樹で、全体に特有の香りがあります。
有名な「魏志倭人伝」に、3世紀ころの日本の風俗とともに、山椒が山野に自生していたことが記載されているほど、日本では古くからなじまれてきたスパイスのひとつだそうです。
英語圏では「Japanese pepper」とも言われています。
山椒には、発汗作用や整腸作用に加えて、冷え性を改善する効果もあるとされています。
さらに、山椒の柑橘系の香りには、リラックス効果も期待されているのです。
「山椒」といっても、新芽、花、実、木の皮など、あらゆる部分が食材として使われていて、ぞれぞれの部位によって旬が異なります。
山椒の木は春に花が咲き、夏に青い実を付けます。
実よりも先に、新芽と花の部分が4~5月頃に旬を迎え、山椒の葉の収穫時期は春頃になります。
青山椒(山椒の実)の旬は6月頃で、収穫時期は夏頃です。
熟した実を乾燥させて作る粉山椒は、11月頃に旬のものが出回ります。
よく見かける山椒は、うなぎの蒲焼などに使われる「粉山椒」ですね。
これは完熟した果実の外皮を乾燥させて粉末にしたもので、さわやかな香りとピリッとした辛みが特徴です。
山椒が持つ舌を痺れさせるような独特な辛みは、「サンショール」と呼ばれる成分によるものです。
「山椒の葉」と聞くと馴染みがないかもしれませんが、旬の時期になると「木の芽」と呼ばれ、スーパーに並ぶことも多くなります。
料理に添えられているかわいらしい小さな新芽は見たことがある方も多いのではないでしょうか。
日本のハーブとして古くから親しまれていて、春の訪れを感じさせてくれるものでもあります。
山椒の葉の表面にはポツポツとした点のようなものがあり、衝撃を与えると香りが広がります。
このポツポツとした部分は「油点」と呼ばれるもので、ミカン科の植物の葉に見られる特徴であり、ここに香りのオイルが溜まっています。
山椒の葉を手のひらでポンと叩くと、細胞が壊れて香り成分が外に出るため香りが強くなります。
そうすることで、シトラス系の爽やかな香りが楽しめます。
しびれるような辛味がある山椒の実に比べて、山椒の葉はピリッとした辛味があります。
また、新芽特有のほろ苦さも味わえますよ。
「実山椒」「青山椒」と呼ばれる青くやわらかい若い実も風味つけに利用されます。
青い実は最も香りと辛味が強く、佃煮などに使われることが多くなっています。
「花山椒」は、実をつけない雄花を食材として利用したものです。
4〜5月に咲く黄色い小花が特徴的です。
つぼみの状態のものがもっとも香りがよく、薬味や佃煮に使用されます。
ミカン科特有のさわやかな香りは、脂っぽい肉料理をさっぱりと食べさせてくれます。
山椒独特の辛味が少なく、やさしい香りや食感が良いとされているのですが、市場ではあまり流通されていないため、目にする機会は少ないかもしれませんね。
花山椒とよく混同されるものに、「花椒(かしょう、ホアジャオ)」と呼ばれているスパイスがありますが、これは、古くは漢の時代から薬として使用されていたともされる、歴史の長い中国産のスパイスです。
花椒は山椒と同じミカン科に属しますが、種類が異なり、主に中国で広く栽培されています。
熟した赤い実を乾燥させ、その果皮を使用するのが一般的で、強い香りとビリビリとしびれる独特の辛みが特徴です。
ホールの状態や粉末状の花椒が売られており、麻婆豆腐をはじめ多くの中華料理、特に四川料理にかかせない香辛料です。
花椒が料理に強い刺激を加える役割を持つのに対し、花山椒は料理の風味を繊細に引き立てると言えるでしょう。
季節の保存食
『実山椒味噌』
今回ご紹介をする季節の保存食は、旬の食材「実山椒」を使った「実山椒味噌」です。
フレッシュな山椒の実を練り混ぜた甘辛の味噌。実山椒の爽やかな香りとピリッとしびれる辛みと、味噌の旨みとコクが合わさった万能な調味料です。
実山椒の下処理方法や青煮(下処理後塩水漬けで保存)もご紹介します。
実山椒味噌は、食材にのせたり塗ったり、和えもの、煮もの、炒めもの、焼きものにと、さまざまなお料理に使えます。実山椒味噌の風味が素材の旨みを引き立て、味わいを豊かにします。
山椒の実は収穫時期が短いので、旬の時期にまとめて保存食にしておくと、使いたい時にすぐ使え、実山椒の風味を長期間楽しむことができますね。
これからの暑い季節、食欲がなくなった時や時短調理のお助け調味料として重宝しますよ。
《実山椒の青煮》(実山椒のアク抜き→塩漬け)
【材料】作りやすい分量(500ml容量の保存びん1本くらい)
・実山椒:100g(枝付き)
・塩:適量(湯1L:塩 小さじ1)
〈A〉水:200ml(1cup)
〈A〉塩:大さじ1
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【つくり方】
①鍋でたっぷりの湯(分量外)を沸かして塩を加え、実山椒を枝ごと入れて2〜3分茹でます。
②ザルにあげて、1〜2時間ほど水にさらします。味をみて好みの辛さになったらOKです。
*水にさらすほど辛さが和らぎます。
*しびれる辛さが強い方がお好みの場合は、さらす時間を短く(30分〜1時間)してください。辛さを控えめにしたい場合は、時々水を入れ替えながら1時間以上さらしでください。
③山椒の実を枝からはずします。実に細い軸が残るくらいでも大丈夫。手の指先を使ってもハサミでカットしても、作業しやすい方法で。
*茹でて実がやわらかくなると、枝から実を外しやすくなります。
④鍋に〈A〉を合わせて入れ、ひと煮立ちさせて、冷まします。
⑤実山椒の水気をしっかり拭き取り、清潔な保存容器に入れ、④を注ぎ入れます。
〈メモ〉
*上記③までが実山椒の下処理(アク抜き)方法です。
*長期間保存したい場合は、③の工程の後、実山椒の水気をしっかり拭き取り、少量ずつ小分けにしてラップで包み、ジッパー付き保存袋に入れて、冷凍保存も可能です。冷凍で約1年間が保存の目安です。
*塩水漬けの状態で保存しておくと、使いたい時に水気を切ってすぐに使えます。
〈保存〉
冷蔵庫で1ヶ月間ほどが保存の目安です。塩水から実山椒が出て空気に触れないように保たせるため、時々容器を揺すって全体を混ぜてください。
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《実山椒味噌》実山椒の青煮を使って
【材料】作りやすい分量(350ml容量の保存びん1本くらい)
・実山椒の青煮(下処理したもの):60g
〈A〉米味噌または白味噌:200g
〈A〉酒:80ml
〈A〉みりん:大さじ2
〈A〉粗糖:大さじ2
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【つくり方】
①実山椒の青煮は、すり鉢かフードプロセッサーで細かくします。
②鍋に〈A〉を入れて全体がなじむまでよく混ぜます。
焦げないように鍋の底から混ぜながら中火にかけ、フツフツとしてきたら火を弱火にして2〜3分混ぜながら煮て、火を止めます。
③粗熱が取れたら、①の実山椒を加えて全体を混ぜ合わせます。
④清潔な保存容器に入れます。
できあがり♪
〈メモ〉
*米味噌だと旨味とコクのある味わいに、白味噌だと甘めでまろやかな味わいの実山椒味噌になります。
〈食べ頃・保存〉
すぐに食べられます。
冷蔵庫で1ヶ月間ほど、冷凍で半年ほどが保存の目安です。
冷凍する場合は、ジッパー付き保存袋に入れて平らにし、空気を抜き口を閉じて保存してください。
〈アレンジメニュー〉
・温かいご飯にのせて。実山椒の香りがたち食欲を刺激します。おむすびに塗って表面をこんがり焼いた焼きおむすびにするのもおすすめです。
・なめ味噌、焼き味噌としてお酒のおつまみに。アジのなめろうに使っても。
・豆腐やだし巻き卵にのせたり、厚揚げにのせて焼いても。
・肉や魚に塗って一晩漬けた「漬け焼き」は、しっとりとやわらかくなり風味も豊かです。鶏もも肉、鶏胸肉、手羽先、豚バラ、豚ロース、サワラ、タラ、サバなど。
・実山椒味噌和え。たけのこ、菜の花やほうれん草など青菜、いんげん、きゅうり、にんじん、キャベツ、長ネギ、長芋、山菜、イカ、タコ、ちくわ、こんにゃくなど。お酢を加えて酢味噌和えにしても美味しいです。
・煮物の風味付け、味噌煮に。味噌煮の定番のサバ、ごぼう、鶏肉、根菜、厚揚げ、豆腐、味噌煮込みうどんなど。
・炒め物の味付け、味噌炒めに。ナス、ピーマン、ごぼう、キャベツ、ゴーヤ、れんこん、大根、玉ねぎ、豚肉、鶏肉、牛肉、厚揚げなど。
・田楽、焼きナス、ふろふき大根などの味噌だれ。
・ドレッシング、スティック野菜のディップソースなど。
・食パンにバターと塗って、チーズをのせてトーストにするのもおすすめ。実山椒味噌とチーズの相性も◎です。
季節の保存食『実山椒味噌』
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