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  • 執筆者の写真morinone

【ことごと綴り】第22回《穀雨》4月20日(~5月5日頃まで)


今回は「穀雨(こくう)」のことごとを綴ってみたいと思います。



《二十四節気》のひとつ穀雨(こくう)は春の節気、立春、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨、の最後の節気です。

穀雨(こくう)とは、百穀(ひゃっこく)に、たっぷりと水分と栄養がため込まれ、元気に育つよう、天からの贈り物でもある恵みの雨が、しっとりと降り注いでいる頃のことです。


百穀とは、数多くの穀物のことで、人類が主食としてきた米、麦、粟(あわ)、稗(ひえ)、黍(きび)、豆などの類をいいます。



この時期に降る雨は、百穀を潤して、芽を出させる恵の雨として 「百穀春雨(ひゃっこくはるさめ)」といわれています。


穀雨は、種まきなどを始めるのに適した時期なので、農作業の目安にされています。

この時季に、特に雨が多いというわけではありませんが、穀雨以降、降雨量が多くなり始めます。


「清明になると雪が降らなくなり、穀雨になると霜が降りることもなくなる」

という言葉があるように、南の地方ではトンボが飛び始め、冬服やストーブとも完全に別れる季節です。


変わりやすい春の天気もこの頃から安定し、次第に日差しも強まりはじめます。 穀雨は、春の最後の二十四節気。

季節は既に晩春となり、徐々に夏へと移り変わっていきます。


穀雨を目安に衣替えをしてみてはいかがでしょうか。


そして、穀雨が終わる頃に八十八夜(はちじゅうはちや)を迎えます。

立春から数えて88日目を「八十八夜」といいます。


八十八夜とは季節の移りかわりの目安となる雑節(ざっせつ)のひとつで、この頃から霜が降りなくなり気候が暖かく穏やかになると言われているので、稲の種まきや茶摘みの目安とされてきました。


また、「八十八」を組み合わせると「米」という字になることや、「八十八」は末広がりで縁起がよいため、豊作祈願の行事や夏の準備を始める吉日とされているそうです。




【春分の七十二候】


だんだんと暖かくなり、野山だけでなく、水辺の葭 (あし) も芽を吹きはじめる季節です。

暖かくなるとともに、霜が降りなくなり、苗が健やかに育ちます。

田植えの準備が始まり、活気にあふれている農家の様子が連想できますね。

そして、百花の王である牡丹が、春から夏へと移りゆく季節の橋渡しをするように咲き始めます。




・初候:葭始生(あしはじめてしょうず) 4月21日〜4月25日頃


・次候:霜止出苗(しもやみてなえいずる) 4月26日〜4月30日頃


・末候:牡丹華(ぼたんはなさく)   4月31日〜5月5日頃




(※七十二候の詳細はこちらをご覧ください。)





【旬の食材】


〈旬の食材Pick up①苺〉


苺は、バラ科の多年草の一種で、オランダイチゴ属に含まれます。


日本では、果実とは「木」になるもの。

苺は草に実がなることから、農業上や植物上は野菜の仲間とされています。


でも、市場では果物として扱われていて、流通上は果物の分野となっています。

今の日本には統一した基準がないそうです。


ところで、赤い愛らしい姿をした苺ですが、食べている部分は、実は果実ではないということをご存知ですか?


この部分は花托の発達した花の一部で、本当の果実は、その周りにある胡麻のような粒のひとつひとつなんです!


かつては東の「女峰」、西の「とよのか」と言われるほど、この2種がほとんどでした。


今では世代交代が進み、現在市場に出回っている主な品種は非常に増えています。


大粒の苺に人気があるようで、「アイベリー」や「あまおう」などの大粒品種や、それをもとに作られた新しい品種が多くみられます。


現在では「あまおう」「紅ほっぺ」「とちおとめ」「さちのか」「さがほのか」が5大品種となり、この5品種だけで全生産量の8割近くを占めているそうです。


完熟しても赤くならない白苺や、桃のような香りを楽しめる「桃薫」など個性派品種の生産も増え始め、注目を集めています。


苺はケーキ作りに欠かせない果物なので、お菓子屋さんが1年中、国産のものを使いたいという要望から品種改良がなされ生まれたのだそうです。


産地や品種ごとに歯ごたえや味わいなど、個性が異なるので、いろいろ食べ比べてお気に入りを探してみるのもいいですね。


苺の旬を冬と思っている方も多いようですが、本来の旬は春です。


ビニールハウスなどの施設を使わずに、屋外の畑で栽培される苺は3月から4月くらいの春後半にかけてがもっとも甘くて香りもよく、しっかりと熟した食べ頃を迎えるのです。

いちごは熟してから収穫するものなので、この時期が本来の旬となります。


でも、「苺の旬は春~初夏」という考えが一般的だったのは、屋外で栽培される苺が主流だった1960年代頃まで。


その後、ハウスなどで人工的に春の環境をつくる促成栽培が普及し、苺は11~12月頃から収穫できるようになりました。

これは、苺の需要が爆発的に増えるクリスマスにあわせて、品質の高いものを冬の時期から収穫するために考えられた技術。

現在では「苺の旬は冬~初夏」と言えるほど、長い期間美味しい苺が食べられるようになりましたね。


ただ、最も美味しく、安く沢山出回るのは1月から4月と言えるのではないでしょうか。 


農園で新鮮な苺が食べられる苺狩りの適期は、地域によってさまざま。

東北~九州の一般的な苺狩りシーズンは1~5月頃で、1~3月頃に最盛期を迎えるところが多いと言われています。


 

苺は、ある程度の量をまとめて食べることが多いので、ビタミンCの摂取に適していて、7粒程食べれば一日に必要とされる量が賄えるとされています。


苺の赤い色素成分であるアントシアニンはポリフェノールの一種で、眼精疲労回復や視力回復に有効といわれています。


また、水溶性食物繊維の一種であるペクチンに富み、腸内環境を改善して便秘の解消などを期待できます。

また、虫歯予防に役立つとされるキシリトール、抗酸化作用を発揮するフラボノイドなども含まれています。



店頭で選ぶ際は、果実全体が赤く染まっており、表面に艶があり産毛のようなものが残っているものを選びます。


また、へたも要チェック。

摘みたての苺のヘタは緑が鮮やかでピンと先が立っています。


ヘタの部分が大きすぎないものを選びます。

青々としたヘタが大きいものは養分バランスがうまく調整できていないものに多いようです。


苺のサイズや形は味にあまり関係していないため、お好みで選んでも問題ありません。


パックに詰めて売られているものは、下の段もしっかりとチェックしましょう。


苺狩りでは自分で採ってたくさん食べられるのが嬉しいですよね。

そこで、甘いイチゴの見分け方のワンポイントアドバイス。


当然、より赤く熟したものを選びますが、苺は糖度が限界まで熟すとヘタの近くの果実表面にひびが入りやすくなります。そういったものを見つけたら、間違いなくとても甘い苺です。


こういう苺は店頭には並びませんので、苺狩りならではの醍醐味といえますね。


購入後、生のまま食べるのなら甘味と香りを十分に楽しめるよう、なるべく冷蔵庫には入れず、その日のうちに食べるのをおすすめします。


冷蔵庫で保存する場合は、傷みやすいため、洗わずに保存するのがポイントです。

乾燥しないようパックごとポリ袋などに入れてから冷蔵庫の野菜室で保存しますが、なるべく早めに食べきるようにしましょう。


食べる又は使う直前で、ヘタを取らずに洗い、最後にヘタを取るようにします。

取ってから洗うと、水っぽくなり、ビタミンCが流れ出てしまいます。

ちなみに、苺は先端のとがった部分に向かってだんだんと糖度が高くなるので、ヘタの方から口に入れると最後まで甘みを感じることができますよ。





〈旬の食材Pick up②よもぎ〉


よもぎはキク科ヨモギ属の多年草で、全国各地の野原や河川の土手などに自生しています。


春になるとさまざまな場所で芽を出すので、日常的になじみ深い山菜です。

生息は日本だけでなく、中国や韓国、ヨーロッパなどでも自生していて、別名「モグサ」や「ヤイグサ」とも呼ばれています。


生命力が高く、平均的に全国で毎年採取ができます。このため栽培ものは市場には出回らないようです。


古くから食用だけでなく、それ以上に生薬として漢方では「艾葉(ガイヨウ)」と呼ばれ、食べる、飲む、浸ける、香りをかぐ、もぐさにするなど、万能薬として利用されてきました。


邪気を払う力もあると信じられ、陰暦5月5日の端午の節句に、香りの高いよもぎは菖蒲と一緒に屋根の下に飾られました。


春の節句といえば「桃の節句」と「端午の節句」が有名ですが、どちらにもよもぎを使った餅が用いられます。


また、田植えの前に早乙女たち※は、よもぎで身を浄めたといいます。 ※水田に稲を植える若い女性のこと


よもぎは春を感じる爽やかですっきりした香りが特徴的で、お灸のもぐさとしても有名ですね。

あの独特の香りは、シネオールという精油成分です。

リラックス効果や安眠作用があるといわれており、アロマとしても楽しむことができます。


別名「ハーブの女王」とも呼ばれており、世界中で愛される春の薬草のひとつです。


美容への興味関心が強い方は、「よもぎ蒸し」という美容法をご存知かもしれませんね。

よもぎ蒸しは韓国の民間健康法で、体の不調を感じたときや産後ケアで利用されているようです。

よもぎを煎じた蒸気でじんわり体を温めることで、リラックス効果もあります。



よもぎの旬は、3月から5月頃です。


地上から15㎝~20㎝ほど成長した新芽を採取します。


その中でも、葉がみずみずしく薄い緑色のものが好ましく、指で簡単にちぎれるほどの柔らかいものを選別すると良いです。

赤くなってきている部分は取り除きましょう。


多年草のため、前年から冬を越している固い葉もあります。

生長している葉は独特の香りが強くなりすぎているうえに、硬くて歯ごたえがあるため、食用には若葉が使われることが多いです。


よもぎ餅などをする場合はたくさん採取したつもりでも足りないことが多いそうです。

目的に合わせて、採取する量を考慮しましょう。


※私有地や許可のないエリアでの山菜の採取は控えましょう。



よもぎは、とても栄養価が高い野菜と言われています。

とくに食物繊維・カリウム・ビタミンK・カロテン・クロロフィルが豊富です。

食物繊維にいたっては、ほうれん草の約3倍も含まれています。


そのため、これらの栄養素の総合的な働きによって、血液中にある老廃物を便と一緒に体外へ排出してくれるため、デトックス効果にも期待が持てます。


よもぎが手に入ったら、水でごみを洗い流しましょう。

キレイに水気を切ったら、乾燥しないようにしっかりと袋や容器に入れ、冷蔵庫で保管します。

2日位で全てを使い切るようにしてください。


新芽は春の時期に大量に収穫して冷凍しておく事も出来ます。

冷凍する場合は一度下茹でしてから密封袋に入れ空気を抜いて冷凍します。

使う時は自然解凍で、おひたしやあえ物、汁物などに使います。


ただし、よもぎは独特の香りが強いので、大量には入れないようにしましょう。

また、繊維質も多いので、固い部分はしっかりと取り除いておきましょう。


薬効成分なども多く、自然の中で育っている野草なのでアクも強いです。


調理をする際には下処理をします。

アクを抜くため、沸騰しているお湯に塩と重層を加えて2分程度茹で、すぐに冷水に20分程さらします。


春の新芽だけの場合には、アクはほとんど無いので重層は要りません。


栄養素を余すとことなく摂りたい方は、重層を入れず、茹であがりにさっと冷水にさらした後、すぐに絞ると良いでしょう。


下茹でしたよもぎを、ミキサーなどでペースト状にして冷凍しておくと、解凍してスープやパンなどを作る時に使用できるので便利ですよ。


現在では、よもぎをパン生地に練り込んだりすることもありますが、日本人にとってよもぎといえばやはり「よもぎ餅」ですよね。


「モチグサ」と呼ばれるほど和菓子の材料としてお馴染みのよもぎですが、その秘密は葉の裏の白くて細かい毛にあります。

その毛が絡みあって餅や団子に程良いコシを加え、味を一層引き立てるのだそうです。


よもぎはお餅の他にも、天ぷらやおひたし、和え物などにも向いています。

天ぷらにする場合は衣を薄くした方が香りを楽しめます。





〈旬の食材Pick up③ごぼう〉


ごぼうが日本に入ってきたのは縄文時代という説や平安時代など諸説あります。


ヨーロッパや中国では古くから薬用として用いられてきたそうですが、食用の作物として栽培してきたのは日本だけで、台湾や朝鮮半島などで食用にされているのは日本人が伝えたものだそうです。


関東は耕土が深く水はけがよいため長いごぼうが栽培されているのに対し、関西は耕土が浅いため葉ごぼうや短いごぼうが栽培されてきました。

今では一般的にごぼうといえば長いものが中心になっています。