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  • 執筆者の写真morinone

【ことごと綴り】第21回《清明》4月5日(~4月19日頃まで)


今回は「清明(せいめい)」のことごとを綴ってみたいと思います。



《二十四節気》のひとつ清明(せいめい)は春の節気、立春、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨の5番目の節気です。

清明とは「清浄明潔」という言葉を略したものといわれます。

すべてのものが清らかで生き生きして明るいという意味です。


若葉が萌え、花が咲いて、鳥たちが歌い舞い飛ぶ、それぞれの生命がいきいきと輝く季節の到来です。



清明の頃には、南東から「清明風」と呼ばれる穏やかな風が吹いてきます。

これは、冷たい北風の季節が終わり、春の到来を知らせてくれる風。

この時期になると晴れの日は暖かくて湿度も低く、とても過ごしやすくなります。木々の緑や色とりどりの花を眺めながら、散策を楽しみましょう。




この頃、空は青く澄んで気候は温暖になり、まさに清々しい時期。

新年度が始まり、新しい環境での生活や仕事がスタートする人も多いですよね。

その分エネルギーをたくさん使う時期ともいえます。

清々しい春の息吹を感じながら、動植物の生命力も分けてもらって乗り切りましょう。




【春分の七十二候】


冬を暖かい東南アジアで過ごしたツバメたちは、繁殖の為、春になるとはるばる海を渡って日本にやってきます。

もともと日本で生まれ育ったのですから、帰ってくるという方がしっくりきますね。


そして、ツバメの渡来とは入れ替わりに、冬を日本で過ごした雁が北のシベリアへと帰っていく頃です。

雁は夏場をシベリアで子どもを産み育て、秋になるとまた日本へやってくる渡り鳥です。その旅路はきっと過酷で、大変なものなのでしょう。また元気に、日本にやってきて欲しいなと心から思います。


春が深くなるにつれ、空気が潤ってくるので、この時期から雨上がりにきれいな虹を見ることができます。

春は陽の光はまだ弱く、その分、夏の虹に比べると淡くはかない虹ですが、それもまた趣があり良いものです。





・初候:玄鳥至(つばめきたる) 4月5日〜4月9日頃


・次候:鴻雁北(こうがんかえる) 4月10日〜4月14日頃


・末候:虹始見(にじはじめてあらわる)  4月15日〜4月19日頃




(※七十二候の詳細はこちらをご覧ください。)




【旬の食材】


〈旬の食材Pick up①ふき〉


ふきは、日本原産の山菜で、キク科フキ属の多年草で雌雄異株です。

平安時代から栽培が続いているという一説もある、古くから愛されている野菜のひとつなのです。


名前の由来は冬に黄色い花を咲かせることから冬黄「ふき」となったと言われています。


独特の香りと苦み、さらに柔らかい食感で旬の春になると食べたくなる野菜ですよね。


地上には花芽と葉が出ていますが、茎の部分は地中に伸びています。私たちが普段食べている茎の部分は本物の茎ではなく、葉柄(ようへい)という部分です。


春一番にふきの地下茎から出てくる花蕾がふきのとうです。

ふきは日のあたる場所を好み、ふきのとうは日陰を好むため、別の場所から生えてきます。



また、花芽分化したふきのとうを収穫せずに放置しておくと綿毛が飛び、そこからもふきが生えるそうです。そのため、ふきのとうがあるからといって、近くにふきが生えるとは限らないのだそうですよ。


ふきの天然物の旬は、3月から初夏にかけて。

私たちがよくみかけるふきはハウス栽培のものが多く、スーパーなどに出回る時期は10月から翌年の5月頃までです。


一般的な品種は、主に愛知県で栽培されている「愛知早生」というもの。

ふきの種類は、「愛知早生ふき」の他に、「水ふき」や「秋田ぶき」などがあります。「水ふき」は、香りが良くて軟らか。また「秋田ぶき」は、肉質が硬いため、つくだ煮や砂糖漬けなどに向きます。


ふきにはとても多くの水分が含まれているため、含まれる栄養素は限られていますが、カリウム、カルシウム、食物繊維の供給源となります。


カリウムには私たちの身体に不必要なナトリウムを体外へ排出する働きがあるので、むくみ予防や高血圧の症状に効果的に働くといわれています。


葉の部分にも多く栄養が含まれています。


ふきの中で一番多く含んでいるといわれる栄養がβ‐カロテンです。

抗酸化作用が高く、アンチエイジング効果が期待できます。


ふき独特の苦味は、クロロゲン酸というポリフェノールの一種で、細胞の突然変異を抑制する作用があり、抗ガン作用が期待されています。


また、古くからフキは民間療法で痰を切り、咳を止める薬用として認められているそうですよ。


ふきを選ぶ際は、葉が鮮やかな緑色をしていてみずみずしく、新鮮なものが美味しいです。


一般的に流通している種で言うと、柄の部分が太くなりすぎず、なるべく空洞が無い物の方が柔らかいといわれています。

さらに、根元から上の方までの太さに極端に差のないもの、しなりすぎないものの方が新鮮です。


鮮度が大切なふきは、収穫後、時間が経つほどアクが強くなっていきますので、収穫後や購入後はすぐにあく抜きなどの下処理をしましょう。


茹でてアク抜きしたものは、水に浸してタッパーなどに入れて冷蔵庫に入れておきます。

水を時々交換すれば1週間ほどは美味しく食べられますよ。






〈旬の食材Pick up②行者にんにく〉


行者にんにく(ぎょうじゃにんにく)はヒガンバナ科ネギ属の山菜で、にんにくやにらの仲間です。


行者にんにくは北海道の特産品としても有名で、流通しているものの多くは北海道産のものです。

独特の風味と高い栄養価が人気となり、近年、各地でも栽培者が増えつつあります。


しかし収穫までに5年以上かかることや、近年では価値が上がり乱獲する人が増えたため、天然のものは数が激減しています。


にんにくのような強い香りが特徴で、修行僧が強壮のために食べていたとされるのが名前の由来です。


茎の太い草のような形をしていて、シャキシャキとした食感で、葉物野菜のように食材として食べることができます。


アク抜きが不要で、一番上の皮をむき、茹でたり炒めたり、ぬたや味噌汁、天ぷらにといろんな調理ができます。


ハウスで作られた栽培物は1月頃から出荷され始めますが、天然の行者にんにくは3月頃から徐々に出回るようになります。

そして、5月末にかけてピークを迎えて、6月初旬には収穫時期はほぼ終了します。


新芽の状態で収穫できる期間が約2週間と限られていることもあり、天然物は非常に希少性が高いとされています。



行者にんにくにはにんにくよりも多いアリシンが含まれています。

このアリシンにはビタミンB1の吸収を助け、疲労回復や滋養強壮に効果があるそうです。


独特のにおい成分である硫化アリルも、強い殺菌力をもち、疲労回復効果に役立つビタミンB1の吸収を助けることが知られています。


行者にんにくに含まれるビタミンKの量は生鮮食品でもトップクラスだそうで、カルシウムを骨に定着させる働きなどがあり、骨を丈夫にするのに役立つといわれています。



行者にんにくは葉が開くにつれ、香りが薄れてしまいます。


茎は太いほうが歯ごたえがよいため、最もおいしいといわれています。


鮮度に関しては、葉の先までみずみずしく張りがあるもので、根元の切り口が新しいものを選びます。


保存する場合は、乾燥しないよう根元を湿らせたキッチンペーパーで包み、袋に入れて冷蔵庫に立てた状態で入れておきましょう。


行者にんにくはそのまま冷凍もできますが、一度熱湯につけてから冷凍するすることをお勧めします。使うときに凍ったまま刻むなどして調理ができ便利です。


また、北海道で一般的な行者にんにくの保存方法は醤油漬けです。


丸ごと、又は適当な長さに切ったものをさっと熱湯にくぐらせ、すぐに冷水にとってよく水気をふき取り、密封できるビンなどに入れて完全に行者にんにくが浸るように醤油を注ぎます。

つけこむ長さで少しずつ味が変わってきますが、1年ほど保存が効く優れものです。






〈旬の食材Pick up③牡蠣〉


牡蠣は世界中に100種類以上が分布していますが、日本で生食用として出回るのは、季節によって異なり、主に真牡蠣(マガキ)と岩牡蠣(イワガキ)の2種類です。


真牡蠣と岩牡蠣ともにイタボガキ科マガキ属の2枚貝で、ごつごつして波打った殻の形状が印象的。


養殖物が大半である真牡蠣は、夏に産卵するので、暑い季節は身が痩せておいしくありません。

最も美味しくなるのは産卵の準備に入る3~4月頃で、身が栄養を蓄えふっくら太って、グリコーゲンやアミノ酸などの牡蠣のうま味成分が最大となり、味もとっても濃厚クリーミーになります。

産地によって水揚げ期間が異なりますが、12月~翌3月がもっとも市場に出回る最盛期です。


スーパーや鮮魚店で並んでいるのはほとんどがこちらの種類。

養殖されているので旬の時期はもちろん、冷凍加工されているものであれば一年を通して楽しむことができます。


真牡蠣の身はしっかりしていて、加熱するとプリっとした食感を楽しめるのが魅力。

大きさは岩牡蠣よりも小ぶりですが、ミルキーで濃厚な味わいは、真牡蠣と岩牡蠣ともに変わりありません。

旨味たっぷりで栄養価が高いため、「海のミルク」と呼ばれています。



岩牡蠣の旬は、夏場の6月〜9月頃です。


天然と養殖いずれの方法で育てられていますが、一般的には天然物が多く出回ります。

そのため、その年の市場価格にもよるものの、基本的には養殖の真牡蠣より高価な傾向にあります。


天然物が多い岩牡蠣は日本海側でよく獲れ、少し沖合の20mまでの深い岩礁域に生息しています。

冷たい海水と敵から身を守るために、真牡蠣よりも殻が大きく厚みがあるのが特徴です。

ちょうど大人の手のひらくらいの大きさですね。

でも、4~5年経過した岩牡蠣には、1kgを超える大物も見られるとか?!


身もひと口で食べることができないほど大ぶりで、さらに濃厚でクリーミー。

ほんのり苦味や渋味も感じる味わいから、「海のチーズ」と呼ばれ、夏の牡蠣として珍重されることが多いです。



古くから生牡蠣を食べていたヨーロッパには、「Rのつかない月は牡蠣を食べるな」という言葉があります。

200年以上もまえのフランスのことわざです。


「Rのつかない月」とは、英語表記の5月(May)~8月(August)の時期のことです。この時期は、生牡蠣を食べてはいけないとされました。

反対にRのつく月である9月(September)~翌4月(April)は、安心して食べられるということです。


冷蔵技術がなかった当時、夏場に腐敗や細菌の増殖が原因で、食中毒が頻発したことから生まれたといわれています。 今では、冷蔵技術や流通網の発達で、食中毒を起こす可能性は昔と比べて格段に少ないですので、あまり当てはまらないのかもしれませんね。


でも、水質管理を怠って細菌が繁殖したり、有毒プランクトンによる一過性の貝毒を持ったりすることもあるそうですから、牡蠣を購入する際は、信頼できるお店や業者から購入するようにしてください。

牡蠣といえば「あたる」というイメージを持っている方も多いですよね。

そもそも牡蠣にあたるケースは、ノロウイルスや腸炎ビブリオなどのウイルスや菌が原因となっています。

ノロウイルスは冬場にピークを迎え、腸炎ビブリオは生息する海水の温度が上がる夏場に発生しやすくなります。


海水経由でウイルスを取り込んでしまった牡蠣を、生または加熱が不十分な状態で食べた場合、食後1~2日のうちに症状があらわれるといわれています。

どんなに新鮮な牡蠣でもノロウイルスが付着している可能性はあるので、十分注意が必要です。


また、牡蠣の食べ過ぎは食中毒のリスクを高めるだけでなく、亜鉛やプリン体の過剰摂取を引き起こす可能性があるのだそうです。


亜鉛の耐容上限量は1日35~45mg、プリン体の推奨摂取量は1日400mg以下です。


牡蠣1個(約20g)あたりの亜鉛含有量は約2.8mg、プリン体含有量は約37mgであることを踏まえると、安心して食べられる牡蠣の量は1日10個ほどが目安になると考えられます。

美味しいからといって、食べ過ぎには注意しましょう。


牡蠣は栄養価の高い食品のひとつです。


牡蠣は1個(約20g)あたり約12kcalと低カロリーなのに、ビタミンやミネラルを豊富に含む栄養たっぷりの食材です。

特に、ビタミン類ではビタミンB12、ミネラル類では亜鉛や鉄を多く含みます。


牡蠣が魚介類でトップクラスの含有量を誇る亜鉛は、体内のタンパク質の合成や酵素・ホルモンの分泌に必要不可欠なミネラルです。


牡蠣に含まれる鉄や亜鉛は、体内に吸収される割合が15~30%ほどと非常に低いのも特徴です。

そのため、鉄や亜鉛の吸収率をアップさせるビタミンCやクエン酸がたっぷりの食材と一緒に食べるのがポイントなのです。

生牡蠣や牡蠣フライなどは、レモン・すだち・かぼすなどの柑橘類をキュッと絞ってからいただきましょう。






【旬の食材レシピ】