新暦の9月7日から(9月21日まで)入る季節『白露』についてのお話しをしましょう。
《二十四節気》のひとつ白露(はくろ)は秋の節気、立秋、処暑、白露、秋分、寒露、霜降の3番目の節気となります。
処暑から数えて15日目頃。この日から仲秋になります。
「白露」とは草の葉に白い露が結ぶという意味です。
夜中に大気が冷え、草花や木に朝露が降り始めることから名づけられたのでしょう。
降りた露はガラス玉のように光って、白い粒に見えます。
太陽が離れていくため空が高くなり、雲が陰影を失い輪郭が柔らかくなるなど、本格的な秋の到来を感じられる頃です。 日中はまだ暑さが残りますが、朝夕の涼しさの中に肌寒さも感じ始めて、だんだんと秋の気配が深まっていきます。
白露の《七十二候》は以下です。
初候:草露白(くさのつゆしろし)9月7日〜9月11日頃
次候:鶺鴒鳴(せきれいなく) 9月12日〜9月16日頃
末候:玄鳥去(つばめさる) 9月17日〜9月21日頃
ひとつずつ見ていきましょう。
《草露白(くさのつゆしろし)》
草花の上に降りた朝露が、白く光り涼しく見える頃。
朝夕の涼しさが際立ってきて、夏から秋への変わり目となります。
露は朝晩の気温が下がる日によく見られ、秋の季語にもなっています。
「露が降りると晴れ」ということわざをご存知ですか?
空気中の水蒸気が冷やされてできる露は、風や雲がない晴れた夜に「放射冷却」(地上の熱が上空に逃げる現象)によって発生します。 昼間、太陽熱によって蓄えられた地上の熱は、空に向かってどんどん逃げていきます。 雲がない夜は、熱はそのまま放射されて、地表温度は下がっていき、 1日のうちで最も気温が下がる明け方になると大気が冷え込んで、露がつくというわけです。
夜の間中雲一つなかった空は高気圧に覆われ、安定した気圧配置になっていることが多いので、翌日の天気はそのまま晴れとなるのです。 このため先人たちは「露が降りると晴れ」と言い伝えてきたのですね。
《鶺鴒鳴(せきれいなく)》
鶺鴒(セキレイ)が鳴きはじめる頃。
「チチィッチチィッ」と鈴のように高い声を放ちながら、秋の空をさわやかに飛んでいくセキレイ。
尾を上下に振り、地面を叩くように歩く仕草から「石たたき」「庭たたき」などとも呼ばれています。
セキレイには様々な種類がいるのですが、その中にハクセキレイとセグロセキレイがいます。
見分けるポイントは、目の下の部分が黒か白かということのようですよ。 目の下が白いほうがハクセキレイ、目の下が黒いほうがセグロセキレイとなります。
セキレイは水辺を好む鳥のため、川の上流域に行くほど多く見られます。 水辺を好む鳥ですが、民家の軒下などにも巣を作るので、近年では市街地にも姿を現し、スズメやハトと同じく、身近な鳥として親しまれています。
飛んでいる姿より、ツツツツっと地面を歩いている様子を多く見る気がしませんか。
人との距離が縮まってもギリギリまで飛ばすに〝どこ吹く風〟な顔をして歩いていますよね。
その姿が可愛らしくてわたしが大好きな鳥のひとつなんです。
窓辺から見つけると思わず〝セキレイちゃん!〟と言いながら目で追ってしまいます。
《玄鳥去(つばめさる)》
暖かくなる春先に日本にやってきたツバメが、秋の涼しい風が吹くこの時季に、暖かい南の地域へと帰っていく頃。
「玄鳥(げんちょう)」はツバメの別名でもあります。
子育てを終えたツバメは、季節の移り変わりとともに旅立っていきます。
ツバメの越冬先である東南アジアやオーストラリアまでは数千km。 1日300km以上移動することもあるそうです。
ツバメは昔から季節の移ろいを知らせてくれる鳥として人々に親しまれてきました。
また、ツバメは穀物ではなく害虫を食べてくれる益鳥として大事にされ、やがて商売繁盛の代名詞にも。
「ツバメの巣がある家は安全」という言い伝えがあるなど、プラスのイメージがありますね。
この縁起の良い鳥が南国へ旅立ってしまうことに、人びとは哀愁を感じたのでしょうか。
先人たちは軒先をかすめるように飛んでいたツバメが徐々に少なくなることで秋の訪れを実感していたのですね。
最近はこのツバメの姿を見ることが少なくなったと言われていますが、それは巣をつくる軒先のある家が著しく減ったためとも言われています。
ですが、たくましく生きるツバメたちは、駅やお店の軒下などに巣をつくり、人間のそばで天敵から守られながら子孫を残しているそうです。
ある意味、人間は試されているのかもしれませんね。
ピィピィピィピィと激しく鳴く子ツバメの鳴き声が聞こえなくなり、飛び立てるようになるといよいよ旅立ちが始まります。
また来年の春先には戻ってくるので、しばしのお別れとなります。
夏に子育てしていたツバメを見かけなくなったら、秋が深くなってきた証拠ということですね。
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