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【季節つぶやき事典】第5回
『季節つぶやき事典』の第5回からは、これまでお話をしてきました二十四節気や七十二候、五節句、雑節について季節ごとに合わせてお送りします。
わたしがシェアキッチンにいながら季節を感じられるのも、こういった暦を知ればこそ。
皆さんと一緒に先人たちの創り出した季節を感じて思いを馳せることができたらうれしいのです。
ではさっそく、新暦で言うと6月5日から(6月20日まで)入る季節『芒種』についてお話ししましょう。

《二十四節気》のひとつ芒種(ぼうしゅ)は夏の節気、立夏、小満、芒種、夏至、小暑、大暑
の第3番目の節気となります。
「芒」は「のぎ」と読み、イネなどの穂先にある針のような部分を言います。「芒種」は稲や麦などの穂の出る植物の種をまく頃を意味します。
ですが、二十四節気は日本の季節感とはずれが生じるため、実際には蒔き終えていて、育てた苗を田植えする時期となります。

現代では田植え機で田植えを効率よくできるようになりましたが、以前は人の手で植えるという大変な作業でしたね。花笠姿の早乙女が田の神様に豊作を祈って田植えをするならわしは今でも続いています。

芒種の《七十二候》は以下です。
初候:螳螂生(かまきりしょうず) 6月5日~9日頃
次候:腐草為蛍(ふそうほたるとなる)6月10日~15日頃
末候:梅子黄(うめのみきなり) 6月16日~20日頃
ひとつずつ見ていきましょう。
《螳螂生(かまきりしょうず)》

気温が上がり湿度が高まって作物の病虫害が心配なこの頃、農作物の害虫を捕食するカマキリは益虫として頼りにされていたのでしょう。そのカマキリが卵から孵化する時期を表しています。
《腐草為蛍(ふそうほたるとなる)》

蛍が明かりを灯して飛び交う頃とされています。
古代中国の人たちは、暑さに蒸れて腐った草や竹の根が蛍に生まれ変わると信じていたそうです。
《梅子黄(うめのみきなり)》

梅の実が熟して黄色に色付く頃とされています。
最近では梅仕事をする方も増えているようで、この時期には店先に梅仕事コーナーがお目見えしますね。
青梅には有害物質が含まれていますが、梅酒や梅シロップ漬けにすることで分解できます。
梅干しや梅酢には、半熟もしくは完熟、ジャムには完熟梅が適しています。
《端午(たんご) の節句》
5月5日は「端午の節句」で、こどもの日として国民の祝日となっていますね。もともとは旧暦の5月5日に行われていたそうです。その旧暦の5月5日は新暦では芒種の頃になります。
「菖蒲の節句」「あやめの節句」とも言われます。

中国から伝わった端午の節句を起原とし、鎧兜や人形を飾り、立身出世を願い鯉のぼりを掲揚して、誕生した男児を祝福し、無事にたくましく育っていくことを祈りました。。

この日に菖蒲や蓬(よもぎ)を屋根や軒に挿して邪気を払い、「菖蒲湯」につかり、粽(ちまき)や柏餅を食べたり菖蒲酒を飲んだりします。 菖蒲や蓬で邪気を払う行事が、武士の時代になって、「菖蒲」を「尚武」(武事を尊ぶ)とかけて、男子の節句として祝うようになったといわれています。
芒種の頃は温度も湿度も高くて伝染病が萬栄しやすい時期でもあり、先人たちは祈りや薬草で邪気を払ったのでしょう。

《雑節 入梅(にゅうばい)》
新暦6月11日頃
黄経(太陽の経路)が80度を通過する日で芒種(ぼうしゅ)から数えて6日目頃。

梅の実が黄色く色づいて梅雨 に入る頃を教えてくれます。その日から約30日間が梅雨の期間になります。
農作業をする方にとって梅雨時期を知る事はとても重要でしたが、現在のように気象情報は発達していなかったので目安として必要だったと考えられています。