2023年12月29日(金)。
ぽかぽかと温かな陽射しのさす穏やかな年の瀬も押し迫る日に、「はじめての発酵ごはん」出版記念イベント『発酵おせち講座』が開催されました。
「はじめての発酵ごはん」は、「旅する調味料講座」や「定番調味料講座」、特別講座の「ぬか漬け講座」の講師でもあります、手作り調味料研究家オザワ先生と、食卓料理家の森本 桃世(モリモト モモヨ)先生による発酵本です。
前書『まいにち発酵ごはん』(ナツメ社)に引き続きこちらの撮影もモリ乃ネキッチンスタジオをご使用いただいており、モリ乃ネのノブさんも、調理アシスタントとして撮影現場でお手伝いをしたという経緯があります。
その出版記念イベントとしまして、年末の家庭イベントでもあります「おせち料理」をこの書籍の中でご紹介をしている麹調味料でつくってみましょう!という内容の講座が実現しました。
そちらの様子を、モリ乃ネスタッフのヒロミがお伝えいたします!
この日は定員を超えて14名満席御礼♪での開催となりました。
まずは、桃世先生の「発酵おせち」9品の作り方デモンストレーションからスタートです。
*発酵きんとん
*発酵中華焼き豚
*発酵なます
*発酵煮しめ
*発酵だて巻き
*ブリと海老の発酵焼き
*イクラの発酵漬け
*有機レンコンの発酵漬け
*黒豆の麹あめ煮
この発酵おせちには、それぞれ麹調味料を使用していますので、何にどの調味料をどの様に使うのかも、作り方の工程から学びます。
その後、オザワ先生より、おせち料理にも使用する「発酵和だし」、「発酵中華だし」、「ベジブイヨン」、「ゆず甘麹」4種の麹調味料の作り方を教わりながら、実際につくってお持ち帰りいただきます。
(発酵は各自ご自宅にて)
桃世先生は、野菜や発酵食品を活かし、からだが喜ぶ料理を作る、さすらいの料理人。
10年間パティシエをしたのち、いくつかのオーガニックレストランを経て、現在は循環する日常を実践するラボ「elab」でプラントベースのお菓子を作りながら、フリーランスとして活動されています。
そして、様々な仕事で料理に関わってきた経験値から、程よいカタチにしたレシピを考案されているそうです。
なので、現場での経験からくる手順の工夫や仕入れ先、料理をする際の細やかなポイントまで、情報がたくさん!
“みりんって、なんでしょう?”
“なぜ、みりんを入れるのでしょう?”
デモンストレーションをしながら、端々に惜しみなく挟み込んで、専門的な用語を使わずにわかりやすく教えてくださっていました。
おや?!
デモンストレーションを傍らでサポートするオザワ先生の隣に、ノブさん?!
そう、この日は、ノブさんも生徒さんとして参加。w
(実際に、年末にはものすごいのをつくっていましたよ。ノブさんのインスタ要チェック!@morinone.nobu)
桃世先生のデモンストレーションは、1品1品ひとつづつ作っていくのではなく、仕込むものは先に仕込み、それぞれの様子を見ながら順次同時進行していくスタイル。
お店の調理場の段取りがそうであるように、家庭で作る際も、そうですもんね。
実践的です。
まずは、海老とブリは発酵中華だしや他の調味料を混ぜたたれに、豚バラ肉は発酵中華だしに、鶏むね肉を発酵和だしに、それぞれ漬け込む工程を一気にしてしまいます。
こうして麹だれに漬け込んで冷凍をしておけば、普段のメインのおかずが1品、すぐに作れてしまうのだそうです!
漬ける素材として「魚、鶏肉、豚肉、牛肉」×「漬けダレのバリエーション」×調理法「蒸す・焼く・煮る」で、いくらでも幅が広がりますね!
この日は、魚介類の仕入れをされたオザワ先生が、特大の立派な海老をご用意くださっていました!
今回は、おせち料理ということで特別ですが、この麴調味料に漬け込めば、通常のスーパーでお買い求めになった素材でも、冷めてもパサつかず、ふっくらとした美味しさになるそうです。
次は、発酵きんとん。
なぜ、栗きんとんではないかといいますと、
栗が入っていないから。w
そうなんです。私も目からウロコ。
栗きんとんのきんとん部分は芋。
栗が入っているから栗きんとん。
今回のきんとんには、なんと!
りんごが入ります!
このきんとんの最大の特徴は、“砂糖不使用”な点。
甘味は、「麹甘酒」と「みりん」のみです。
あとは、芋自体の甘味。
そこに、煮りんごの自然な甘味と酸味が加わって、軽やかな甘みのきんとんができあがりました。
新しい~!
漬け込んでおいた豚バラ肉は蒸し器で蒸し上げます。
麹調味料に漬け込んであるので、こちらも冷めてもパサつくことなく柔らかで、美味しくいただくことができるそうです。
そして、この蒸した時に出る汁がまた、とても美味しいのだと教えていただき味見もさせていただきました。
しっかりと旨味が出ていて、そのままでも美味しい!
(茹でても同様に、その煮汁が使えるとの事)
おでんやラーメンのスープに抜群だそうですよ。
野菜の皮を剥いて、発酵煮しめと蓮根の発酵漬けをつくります。
今回使用する野菜は、桃世先生がいつも仕入れをしているところからのもので、土づくりにこだわっていらっしゃる農家さんだそうです。
この真っ白できめ細やかな蓮根、見るだけでも違いがわかるものなのですね。
そして、一旦オザワ先生にバトンタッチをして、飾り切りのレクチャーを。
人参、蓮根、大根、柚子が、素敵に形取られていきました。
人参と大根をスライサーで細めの千切りにして、発酵なますをつくります。
こちらは、米酢にゆず甘酒をいれることで、砂糖不使用で、柚子の香り立つ仕上がりに。
柚子の皮のカップに詰められて、なんて可愛らしいのでしょう~。
カットした野菜と、最初に漬けておいた鶏むね肉を発酵和だしとみりんを入れ、発酵煮しめをつくります。
こちらも、味付けは発酵和だしと塩で整えるだけ。
土づくりからこだわっている美味しい野菜を使うと、醤油や塩を多く入れなくても、野菜自体の美味しい旨味(出汁)がでるとのこと。
野菜そのものの味、発酵和だしに漬け込んだ鶏肉の旨味で、やさしい味わいの煮しめです。
醤油を使用していないので、色も野菜そのまま。
美しいですね。
時折見られる、このお三方並び。(桃世先生、オザワ先生、ノブさん)
私はなんだかこの光景が微笑ましくて、実は並ぶたびにシャッターを押してしまっていて、写真はまだ他にもあります。w
3人共に、こだわりを持って食に関わるプロですが、それぞれに持ち味が違って、面白いな、と感じてしまいます。
そして、伊達巻。
以前、ノブさんが甘くない伊達巻を作ってくれたことがあるのですが、その時も“伊達巻ってつくれるの?!““伊達巻って甘いものじゃなくてもいいの?!”と、またまた目からウロコでした。
伊達巻といえば、あま~くて、おせちのお重にいつまでも鎮座し、仕舞には正月2日目辺りから、「ノルマ」を与えられていた我が家では、ちょっとした厄介者扱い。
今回の伊達巻は、卵に鱈のすり身を入れ、麹甘酒と塩で味付けをされているので、ほんのりとした甘み。
甘すぎず沢山いただくことができます。
この甘酒を麹調味料に替えれば、甘くない伊達巻になるのだそうです。
パティシエ時代の経験からくる、クッキングシートの敷き方から丁寧に説明いただきました!
生徒代表!ノブさんの参戦。w
焼きあがった伊達巻を、伊達巻と言わしめるべく、巻いていく工程。
伊達巻は、書物のような巻物に似ている形から「知恵が増える」ことを願う縁起物ともいわれていますからね。
事前に、桃世先生がつくってきてくださった伊達巻は、みなさんのお持ち帰り用。
こちらも、最初に漬け込んでおいた海老とブリ。
さっと焼き目をつけてから、漬けこんでいた発酵中華だしと他の調味料を混ぜたたれをからめて煮ます。
煮詰まったとろみのあるたれがからんで照りが出て、見た目も香りも食欲をそそられました。
その他に蓮根の発酵漬けや黒豆の麹あめ煮もつくり、前半のデモンストレーションは終了。
かなりの時間を、皆さん集中して見ていたので、一旦休憩をはさんでいただいてから、後半は麹調味料づくりの実習に入ります。
麴調味料づくりは、とにかく材料を細かく刻む作業がたくさん。
刻んだり、炒めた材料を混ぜあわせていきます。
3つのグループに分かれて、「発酵和だし」、「発酵中華だし」、「ベジブイヨン」、「ゆず甘麹」4種の麹調味料をそれぞれ人数分作っていただきました。
(ほら、一番手前に見慣れた生徒さんがいますよw)
実習の時間、皆さんとても楽しそうに協力しながら作業を進めていらして、キッチンスタジオが活気づいていました。
少し前の日本の風景は、こんな風に皆が集まってお餅をついたりして年末年始に備えていたのではないでしょうか。
こちらが、皆さんで作って分けていただいた4種の麴調味料。
発酵は各自ご自宅にてしていただきます。
発酵のさせ方も、発酵機の場合、炊飯器の場合を教えていただきました。
さて、ご自宅でどんな料理に使われるのでしょう~。
おふたりが用意してくださっていたのは、おせちお持ち帰り用のこんな素敵な箱。(蓋つき)
おせち料理らしく、箱に詰めていきます。
並んだ様子が、もうお正月のおめでたい雰囲気!
今回の講座にて、先生のお話の中で特に印象的だったのは、
おせち料理には、素材やかたちに意味があり、日持ちのために濃い味付けや甘い味付けのものが多いけれど、日持ちを重要視しないのであれば、味付けは好みのものでいい。
年末の忙しい時に、一生懸命につくっても、あまり人気がないこともあるという悲しい実態を払拭すべく!
ということでした。
またまた3度目の目からウロコ。
確かに、現代においては、冷蔵庫もありますし、おせち料理は2日も食べれば少々飽きてしまうでので食べきってしまいます。
そう日持ちを考慮する必要はなくなってきているのに、「おせち料理はこういうもの!」という、固定概念に、またとらわれていたのだなぁ、と気付きました。
大切に守り継ぐものもあるけれど、堅苦しさをなくして、今の暮らしに寄り添うカタチで楽しみながら続いていけばいいのだな、と。
そして、もうひとつ。
「みんなでつくると楽しい!」
これが、今回参加された皆さんからも多く上がっていた声です。
年末の忙しい時期に、台所にこもって一人おせちづくり。
そんなに頑張っても、あまり大喜びされないおせち。
それが、今回の講座でみんなでつくってみたら、どちらも解決できるのでは?!
「脱!おせちの義務化!おせちの固定観念!」
という結論に。w
おせちがもっと美味しくて(好みの味で)、つくるのも楽しくて、家族も喜べば、おせちづくりそのものも「家族行事」や「お友達との年末恒例行事」になったりもして。
まだまだこれからも脈々と繋いでゆける日本のならわしとして残してゆけるのではないでしょうか。
「来年もまたやりましょう!」
そんなお話もちらほら出ていましたので、こちらを見てご興味を持たれた方は、特に年末のお知らせを目を皿の様にしてご覧くださいね。w
この日『はじめての発酵ごはん』をお求めいただいた方々には、先生たちの直筆サインつきです!
人気の「発酵」生活を手軽にはじめられる1冊となっていて、麹を使った発酵調味料12種と、その調味料を使った77の展開レシピが紹介されています。
是非、お手に取ってその充実した内容をご覧いただき、「発酵」のある暮らしをお楽しみくださいませ。
ご参加いただきました皆さん、ありがとうございました。
この楽しさを知ってしまった方々は、「みんなでつくるおせち沼」に片足を突っ込んでしまったのではないでしょうか?w
講座の終わりに「よいお年を~!」と挨拶をしてお別れをするこの講座が、恒例行事となったらいいですね。
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