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執筆者の写真morinone

【ことごと綴り】《霜月(しもつき)》11月


毎回、毎月1日か、前月末に、その月のならわしについて綴っていく予定のことごと綴り。


今回は、霜月の「ならわし」について綴っていきたいと思います。


先人たちから受け継がれ続けてきた日本のならわしについて想いを巡らせて、これからも暮らしの中にゆったりと無理なく、丁寧に受け継いでいくことができたら嬉しいです。


(※霜月の「ならわし料理」はお休みさせていただきます。)




【霜月(しもつき)】


寒さが深まり、霜が降りる“霜降月(しもふりつき)”が転じて「霜月」。


他にも、満ちた数字である十を上月(かみつき)とし、それに対して下月(しもつき)になったという説、その年の収穫を感謝する意味を持つ「食物月(をしものつき)」が省略されたという説があります。


11月は他に「霜見月(しもみづき)」「雪待月(ゆきまちづき)」「」雪見月(ゆきみづき)」や、神無月に出雲大社に集まった神様たちがもとの場所へ帰るので「神帰月(かみきづき)」とも。






すっかり色付いたイチョウの黄色い葉が、高く澄んだ空の薄い水色に映える小春日和です。冷たい北風が吹き始める頃でもありますので、本格的な冬へ備えて仕度を始めましょう。












■11月4日・16日・28日

【酉の市(とりのいち)】



11月の酉の日、大鳥大社を総本社とする大鳥信仰の神社である、各地の鷲神社(おおとりじんじゃ)・大鳥神社などでは、来る年の開運、授福、殖産、除災、商売繁昌をお祈りするお祭「酉の市」が行われます。


鷲神社は天日鷲命(あめのひわしのみこと)日本武尊(やまとたけるのみこと)をお祀りした由緒正しい神社です。


酉の市は日本武尊(やまとたけるのみこと)が東夷征討の勝ち戦を祝い、松の木に熊手をかけてお礼の祭りをしたことに由来すると言われています。

その日が酉の日だったことから、酉の日が神社の祭礼日となり、酉の市につながっていったそうです。



酉の市が開かれる「酉の日」とは、十二支を暦に当てはめたとき、酉に当たる日のことです。 つまり12日に一度巡ってきます。 11月最初の酉の日を「一の酉」、次を「二の酉」、その次があれば「三の酉」と呼びます。


令和4年(2022年)の酉の市は ● 一の酉:11月 4日(金) ● 二の酉:11月16日(水) ● 三の酉:11月28日(月)


二の酉までしかない年と三の酉まである年があるのは、暦の巡りで酉の日が2回ある年と3回ある年があるためです。


酉の祭(まち)と呼ばれていたこのお祭りですが、それが次第に姿を変えて、農作物や農具を売る市が立つようになり、江戸時代に入ると、「縁起熊手」が露店で売られるようになりました。


この熊手は、見た目そのものが鷲の爪のような形状をしていることから、「幸運を掻き込んで手元に入れる、鷲づかみにするという意味合い」もあり、縁起物のなかでも代表的なものとして今日でも定着しています。



熊手は「かっこめ」、「はっこめ」とも呼ばれます。


縁起熊手を買い求める際には、1,000円台程度の小さなものであれば、普通に購入すれば事足ります。ですが、10,000円以上もする大型のものになると、売る人と買う人との間での掛け合いが始まるのが普通なのだそうです。

実は熊手は言い値で買うのではなく、買う立場の客のほうは思い切り値切るのが買い方の作法のようになっているのだとか。


掛け合いの妙を楽しむのもまたお祭りの風情のひとつということですね。


その値切り方というのは、まずは本来の予算よりも少なめの金額をお店の人に伝えて、金額にふさわしい小さな熊手を相手が出してきたところで、逆に大きめの熊手を所望して、何度か値切った上で妥協するというものだそうです。

交渉成立の際には、お店の人が威勢のよい手拍子と掛け声で締めの儀式をするのが定番になっています。

ただし、このような値切って熊手を購入した場合であっても、値切った分もいっしょにご祝儀としてお店の人に渡してさっそうと帰るのが、江戸っ子の心意気をもつ人の粋な買い方とされているのだそうですよ!

(なんて格好のいいこと!この掛け合いをスマートにやってみたいものです。)



熊手は、神棚や玄関などに飾りましょう。 大切なのは、目線より上に飾る(もちろん清潔な場所)ことです。 そして飾る方角によっても良くなる運が変わってくるのだとか。 ・東:仕事運、社運、勝ち運 ・南:地位、名誉 ・西:金運、財運


【ex.有名な酉の市が行われる神社・寺】


・鷲神社・長國寺(浅草)

・花園神社(新宿)

・大國魂(おおくにたま)神社(東京府中市)

・金刀比羅大鷲神社(ことひらおおとりじんじゃ)(神奈川横浜市)

・大鳥神社(大阪堺市)

・長福寺(名古屋)など






■11月7日

【立冬(りっとう)~二十四節気】


(※「立冬」について詳しくはこちら)






■11月3日

【十日夜(とおかんや)】



十日夜(とおかんや・とおかや)は、「刈り上げ十日」とも言われ、稲の刈取りが終わって田の神が山に帰る日とされる旧暦の10月10日に、田の神様に稲の収穫を感謝して、翌年の豊穣を祈る「刈り上げ祭(収穫祭)」です。


北関東を中心に甲信越から東北地方南部の東日本で行われています。


旧暦の10月10日は、2022年は11月10日にあたりますが、十五夜や十三夜と異なり、十日夜はお月見がメインではなく、収穫を感謝する行事であることから、新暦の10月10日や、月遅れの11月10日に実施する地方が多いようです。


田の神様へは、感謝の気持ちを込めて大根やぼた餅、蕎麦をお供えします。


また、刈り取った稲で、藁(わら)を束ねて「藁づと」や「藁鉄砲」を作り、子どもたちが歌いながら地面を叩き、家々をまわり、菓子や祝儀をもらう風習があるそうです。


ハロウィンのような行事が日本にもあったのですね。



地面を叩くのは、地面の神様を励ますためだと伝えられていますが、現実的な解釈として、作物にいたずらをするモグラを追い払う意味もあると言われています。


また、「かかしあげ」といって、田の神の化身とされるかかしを家に持ち帰り、お供えものをしたり、かかしにお月見をさせてあげる地方もあります。


近年では、しばらく行われていなかった十日夜を復活させる地域もあるようですね。


十日夜はお月見よりも収穫祭の意味合いが強いのですが、十五夜、十三夜に次いで月が綺麗に見えると言われていて、この3日間が晴れると縁起がよいとされています。


なお、西日本には十日夜と呼ばれる行事はないものの、旧暦の10月の亥の日に「亥の子(いのこ)」や「亥の子祭り」「亥猪(げんちょ)」など、地域によって呼び名が違う十日夜と似たような行事が行われます。


現在は11月の最初の亥の日に催されており、2022年は11月6日になります。

この日に行われる亥の子搗(つ)きは、子どもたちが藁束や石で地面を打ってまわり、十日夜と同じように餅や祝儀をもらうというものだそうです。




■11月15日

【七五三】



神社などに、子供の健やかな成長を感謝して、これからの幸せを祈願する行事です。


貴族や武家社会における古くからの風習が「お宮参り」という形式に変化して広まった日本独自のものとされています。



昔は、数え年で男の子は3歳と5歳、女の子は3歳と7歳でお祝いとしましたが、現在では満年齢で男の子は5歳、女の子は3歳と7歳というのが一般的ですね。




この年齢でお祝いをするようになったのは、平安時代に始まった、成人を迎える前の通過儀礼が由来だといわれています。


3歳までは男女ともに剃っていたいた髪を伸ばし始める「髪置き」、5歳になった時に初めて男の子が袴を履く「着袴(きはかま)」、7歳になった時に初めて女の子が大人と同じ帯を結ぶ「帯解き」の3つだそうです。


かつては、秋の収穫最後の11月15日に行われていたのですが、現在は11月の吉日や、家族の予定が合う週末にお参りを行うことが多いようです。



七五三のお宮参りでは、千歳飴をもらった子供たちの喜ぶ姿が見られますね。


「千歳(ちとせ)」という言葉には「千年」「長い年月」の意味があります。

また、千歳飴の細長い形状や、引っ張るとどこまでも伸ばせる性質から「細く長く」「長寿」が連想され、千歳飴には「細く長く粘り強く、いつまでも健康で長生きしてほしい」という意味が込められています。






■11月22日

【小雪(しょうせつ)~二十四節気】


(※「小雪」について詳しくはこちら)






■11月23日

【新嘗祭(にいなめさい)】


新嘗祭は、五穀豊穣を天神地祇(てんじんちぎ:すべての神様の総称)に感謝する皇室の伝統行事である収穫祭です。


「しんじょうさい」ともいい、「新」は新穀を「嘗」はお召し上がりいただくことを意味し、収穫された新穀を神に奉り、その恵みに感謝し、国家安泰、国民の繁栄をお祈りします。



現在、このお祭りは毎年11月23日に宮中を始め、日本全国の神社で行われていますが、特に宮中では天皇陛下が自らお育てになった新穀を奉るとともに、御親らもその新穀をお召し上がりになります。


新嘗祭の起源は古く、「古事記」にも天照大御神(あまてらすおおみかみ)が新嘗祭を行ったことが記されています。


そして、稲作だけではなく世の中をかたち作るすべての勤労に感謝しよう…という思いから、「勤労感謝の日」と名前が変わり、現代まで続いています。


勤労感謝の日は現代の国民の祝日の中で、もっとも長い伝統を持つ祝日のひとつといえます。



昔は、新嘗祭の日までは新米を食べてはいけないとも言われました。

神様に新穀(初穂)を捧げるより前に、人が食べるのはおそれ多いという考えからです。


早いと9月には新米が出回る現在、そこまでする必要はなさそうですが、改めて今の豊かな食に感謝し、見つめ直すことは大切なことですね。






■11月24日

【和食の日】



2013年に、「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたのを記念してつくられた記念日です。


日本の秋は「実り」の季節であり、「自然」に感謝し、来年の五穀豊穣を祈る祭りなどの行事が、全国各地で盛んに行われる季節でもあります。


毎年、一人ひとりが「和食」文化について認識を深め、「和食」文化の保護・継承の大切さを再認識するきっかけの日となっていくよう願いをこめて、日本の食文化にとって大変重要な時期である秋の11月24日が、“1124”“いいにほんしょく”の語呂合わせで「和食の日」と制定されました。



ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」とは、私たちが普段食べている家庭料理ではなく、「和食 = 日本人の伝統的な食文化」という文化としての和食なのです。


その特徴としては、


・多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重

・健康的な食生活を支える栄養バランス

・自然の美しさや季節の移ろいの表現

・正月などの年中行事との密接な関わり


といった点がポイントになっています。



ユネスコ無形文化遺産への登録は、自然を尊ぶ日本人の気質に基づく「食」のならわしそのものが、世界中に注目されるようになりました。


この「ことごと綴り」で綴り、皆さんと継承していきたいと願う「季節」と「食」と「ならわし」。


日本人であるわたしたちが、この日だけでなく、日常に流れる時間の中で、どれだけ自然を感じ、季節を知り、先人たちの知恵と心意気を次の世代へつないでいけるのか。


文化遺産としてだけでなく、尊いものとして日々感じていきたいもののひとつです。





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