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【ことごと綴り】第23回《立夏》5月5日(~5月20日頃まで)
今回は「立夏(りっか)」のことごとを綴ってみたいと思います。

《二十四節気》のひとつ立夏(りっか)は夏の節気、立夏、小満、芒種、夏至、小暑、大暑、の最初の節気です。
立夏は夏の兆しが見え始める頃です。
新緑を青々と茂らす木々たちがとても美しく、すがすがしい風を感じられます。
気温は高くても、梅雨の手前で湿度も低いため、とても過ごしやすく晴れた日が続く1年で最も爽やかな季節です。
外で過ごすには最適な季節ですが、もうすでに紫外線が強くなってくる頃でもありますので、お出かけの時には対策を忘れないようにしましょう。

旧暦の時代に、梅雨の晴れ間という意味合いだった「五月晴れ」という言葉がこの頃の爽やかな晴天という意味でも使われるようになりました。
【立夏の七十二候】
野原や田んぼで蛙が鳴き始める頃。
蛙の声が賑やかになってくると、野山の若葉もみずみずしく輝いて、まもなく本格的な夏が訪れます。
蚯蚓(みみず)や筍(たけのこ)がひょっこりと土の中から顔を出します。
蚯蚓は夏の訪れを告げ、田畑の土を豊かに肥やしてくれる隠れた味方なのです。
・初候:蛙始鳴 (かわずはじめてなく) 5月5日〜5月9日頃
・次候:蚯蚓出 (みみずいずる) 5月10日〜5月14日頃
・末候:竹笋生 (たけのこしょうず) 5月15日〜5月20日頃
(※七十二候の詳細はこちらをご覧ください。)
【旬の食材】
〈旬の食材Pick up①新茶〉

お茶の葉は、ツバキ科の茶の木から育ちます。
茶の木(チャノキ)は常緑樹で、冬であっても葉を落とすことはありません。
しかし生長には一定の気温と日光を必要とするため、冬の間は活動が止まってしまいますので、冬季に収穫されることはありません。
茶の木はこの期間中にゆっくり休養して養分を蓄え、春に栄養をたくさん含んだ若葉を生長させるのです。
その年の最初に芽吹いた新芽で作ったお茶のことを「新茶」といい、「一番茶」とも呼ばれます。
太陽光をあまり浴びていない新茶の葉はやわらかく、生命力に溢れたみずみずしさがあります。
新芽のあとに育った芽でつくられるのが「二番茶」や「三番茶」。
これらのお茶は総称して「番茶」と呼ばれています。
番茶は旨味や甘み成分が少ない分、さっぱりとした味わい。
カフェインも低いことから、大人から子どもまで幅広い層に親しまれるお茶です。
お茶は春から秋にかけて数回収穫できますが、最初に採れるお茶にその栄養分がたっぷり含まれています。
収穫が後になる程、茶葉に含まれる栄養分はどんどん減っていきます。
新茶に多く含まれる成分で、1番重要とされるのは何といっても旨味成分であるアミノ酸です。
旨味と甘みの主成分であるテアニンも二番茶の3倍以上含まれていると言われ、渋みが少なく、美味しさに溢れているのです。
新茶特有の蒼く瑞々しい爽やかな香りは格別で、この香りはなんと製茶後2ヶ月ほどしか味わえない、特別なもの。
これこそが「旬の旨味」なのです。
冬の間に蓄えたアミノ酸は香りを生み出す働きも持っていて、アミノ酸が多いほど香り高くなます。
また、新茶独自の香りを全面に出すため、多くの茶園では仕上げの火入れを浅くしているのだそうです。
そのため、温度の高いお湯で淹れるのは避けて、風味が強く出すぎないよう70~80度のお湯で淹れるようにしましょう(逆に温度が低すぎると香りが弱くなってしまうのでご注意ください)。
また、茶葉の量を少し多めにするのも新茶を美味しく淹れるコツです。

茶葉によって温度や蒸らし時間は変わってきますので、パッケージや説明書きでよく確認して淹れてくださいね。
・急須に茶葉を入れる。
・お湯を沸騰させる。
・必要な量のお湯を、湯呑みや湯冷ましを使って温度調節。
お湯は器から器へ移すたびに10℃ほど下がるので、それを目安に行いましょう。
・一煎目なら70~80℃位の温度になったお湯を急須に入れて蒸らす。
・湯呑みに注ぎ、最後の一滴まで注ぐ。
・注ぎ終わったら急須の蓋を開け、茶葉を冷ます(二煎目、三煎目のため)。
日本茶の味を損なう主な原因となるのが「湿気・温度・酸素・光・におい」の、5つの要素。 高い温度や湿度、そして酸素に触れる環境は、茶葉の色や香りを変化させ、味わいに影響を与えます。
また、葉緑素の分解を促進する光(紫外線)も、茶葉の色に変化を与える要因のひとつです。
それに加え、周囲のにおいを吸着しやすい特性も持っていますので、自宅で日本茶を保存する際には、これら5つの要素を茶葉から遠ざけることが、お茶の美味しさを保つポイントとなります。 パッケージが未開封であれば、日本茶は袋のまま保存することが可能です。
しかし、開封後は茶葉の容量に見合った茶筒や、密閉できるパックに移し替え、空気を抜いた状態で保存しましょう。 こうして空気との接触を防ぐことで、におい移りだけでなく、茶葉の酸化を防ぐことができます。
たくさんのお茶があり、一度に飲みきれないという時に最適な方法が、冷凍保存です。
低温である冷凍庫での保存は、他の食品のにおい移りを心配することなく、お茶の味の劣化を防ぐことができます。 ただし、冷凍保存したお茶を飲む時に注意したいのが「結露」です。 冷凍した食品を常温に置いておくと、周りに水滴が付くことがありますよね。
同じ様に、冷凍保存した茶葉をいきなり常温に戻すと、外気温との差で結露が発生し、茶葉が湿気を帯びてしまいます。 これでは、茶葉本来が持つ、旨味と香りを再現することはできません。
冷凍保存した茶葉を美味しく味わうためには、前日に冷凍庫から取り出して封を開けずに冷蔵庫へ移し、当日は室温でゆっくりと常温に戻して使用しましょう。
お茶本来の香りや旨味を楽しむためにも、日本茶は開封後2週間から1カ月で飲みきるのが理想的です。
開封してから時間が経過するほど、茶葉は湿り気を帯び、色や香りも損なわれてしまいます。 そのため、大量購入して長期保存するより、少量単位で早めにいただく方が、お茶の味わいをより深く楽しむためにはおすすめです。
「夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る…」
これはお茶を摘む様子を表した唱歌、茶つみの歌です。
誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。 八十八夜とは、2月の立春から数えて88日目の5月2日前後。
二十四節気で1年の始まりにあたる立春は、吹く風が暖かく変化し、山から雪解け水が流れる春のはじまりの季節。
そこから88日数えた八十八夜は、農業における種まきの目安であり、お茶農家にとっては新茶の時期でもあるのです。
お茶が日本に伝わった時代は滋養強壮・体調回復のために飲まれていたことから、八十八夜に摘まれたお茶を飲むと「1年間無病息災で過ごせる」「新茶は長寿につながる」と言われ、縁起物とされています。
〈旬の食材Pick up②じゃがいも〉

主成分がデンプンで、主食にもなる野菜として世界中で栽培されています。
ビタミン類も豊富なことからフランスでは「大地のりんご」と呼ばれています。
日本での代表的な品種は、ホクホクした粉質系の男爵やキタアカリ、そして煮崩れしにくい粘質系のメークイーンです。
近年では、見た目、食感ともにさまざま品種が栽培され、好みや用途に合わせた選択肢も増えてきました。
じゃがいもの収穫は、春と秋です。
保存も効くのでいつでも手に入りそうですが、旬と言えるのは、春の5~6月頃と秋から冬の9~12月頃の年2回です。
3月から6月に出回るものは新じゃがと呼ばれ、貯蔵されずに出荷されるため、みずみずしさと新鮮な香りが特徴です。
その一方で貯蔵されたものは余分な水分が抜けて熟成が進むためコクが増しますが、新じゃがのような香りはありません。
つまりそれぞれに良さがあるといえます。
じゃがいもに豊富に含まれるビタミンCは、デンプンに包まれていることで、加熱などで壊れにくいのが特徴です。
ビタミンCには、抗酸化作用や美肌効果などが期待できます。
また、高血圧予防やむくみ改善につながるといわれるカリウムも豊富です。
お店で選ぶ際には、持ったときに重量感があるもの、傷がなく、しなびていないものを選びましょう。
芽が伸び始めたり、表面が緑色になっているものは避けてください。
じゃがいもは冷蔵庫での保存にはあまり適さないので、土のついたまま風通しの良い冷暗所で保存してください。
芽が出ると、食中毒を起こす可能性のあるソラニンという毒素ができてしまうので、直射日光の当たる場所は避けましょう。
5℃以下の場所が理想的で、1~2ヶ月の保存が可能です。
夏場でも常温で1週間程度持ちます。
リンゴと一緒に保存するとエチレンガスの作用で、芽が出にくくなるそうですよ。
冷凍保存したい場合は電子レンジで加熱したり、または蒸したり茹でたりしてからつぶして冷凍をしておくと、調理するとき使いやすくなります。
芽とその周辺にはソラニンが含まれており、大量に取ると、腹痛やめまいなどの症状が現れることがあります。
日光に当たって緑色になった部分も一緒に、しっかりと取り除いてから調理しましょう。
〈旬の食材Pick up③筍〉

竹の地下茎から出てくる若い芽を筍(タケノコ)と呼びます。
竹は意外にもイネ科にあたり、温暖な地域に多く生えています。
一般的に手入れをされていない竹やぶの場合、筍は藪の中よりも藪の周りに良い物が出てきます。
また、竹を伐採されて剥きだしになっているような場所や、藪近くの草むらなどにも根を伸ばして沢山出ている事があるそうですよ。
「筍」は一旬(10日間ほど)で「竹」までに生長してしまうことからその名がついたのだそうです。
ということは、食べられる期間もほんの一瞬ということです。
土から出るか出ないかという時だけなので、目が離せませんね。
皮には、イノシシやキツネなどの動物に食べられないように、筍を守る役割があります。
実はあの皮が、筍と竹を分ける境界なのです。
背が伸びるにつれて、皮は1枚1枚、自然とはがれ落ち、すべて落ちると竹になるというわけです。
ちなみに、皮が全部落ちるのに30日ほどかかるそうです。
筍の種類は多く、70種類ほどあるといわれていますが、食用にされているものは孟宗竹(もうそうだけ)をはじめ、淡竹・真竹、根曲がり竹(姫竹)など、ほんの数種類です。
今回は、「筍といえばこれ!」といえるほど、日本国内で最もポピュラーな孟宗竹について掘り下げてみます。
孟宗竹は大型のものが多く、苦みと甘みをバランス良く兼ね備えています。
九州から関西にかけて幅広い土地で栽培されており、長い期間旬を楽しむことができるのも特徴です。
店頭で目にする機会の多い孟宗竹は、主に3月初旬~5月中旬に旬を迎えます。
また、鹿児島県などの温暖な土地では「早掘り筍」と呼ばれる11~12月ごろにかけて収穫されるものもあります。
流通量が最も多い品種であることからも、筍を美味しく安価に入手するにはやはり春の時期が良いと言えるでしょう。
孟宗竹と同じような地域で栽培される淡竹・真竹は、孟宗竹よりも少し遅れた4月~5月終わりごろが旬の時期です。
グルタミン酸やチロシン、アスパラギン酸などの旨味成分でもあるアミノ酸が含まれていて、食べて分かるとおり食物繊維が豊富です。
筍は伸び過ぎたり、日に当たる時間が長いものはアクが強くなります。
先端が緑色になっているものは日に当たったもので硬くえぐみが強くなるので、なるべく黄色に近い状態のものを選びましょう。
伸び過ぎていないもの、皮の色が薄いもの、皮の部分がしっとりしていて乾いていないものを選んでください。
細い物より、太短い物が美味しいそうです。
根もとの周りに赤いぶつぶつがありますが、これが少ないものが良く、多いものはもうアクも強いと思って良いでしょう。
また、赤い色が薄いものの方がアクは少ないです。
筍は、掘り出された後、時間を追うごとにどんどんアクが強くなっていきます。
出来るだけ早く下ゆでしてアク抜きしましょう。
筍のアク抜きの仕方は、下記の【旬の食材レシピ】で紹介していますので、ご参照くださいね。
筍を切ったとき、断面に白い粉や塊のようなものがついていることがありますね。
これは筍に含まれるチロシンという成分が、茹でる過程で結晶化したものです。
チロシンはアミノ酸の一種なので、食べても問題はありませんが、硬くザラっとした食感や見た目が気になる方は、水で洗い流しましょう。