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【ことごと綴り】《睦月(むつき)》1月
今回は、睦月の「ならわし」について綴っていきたいと思います。
先人たちから受け継がれ続けてきた日本のならわしについて想いを巡らせて、これからも暮らしの中にゆったりと無理なく、丁寧に受け継いでいくことができたら嬉しいです。

【睦月(むつき)】
無事に新年を迎えることができ、神様に感謝して家族と共に謹む月。
正月に親類や知人が集まり、親交を深めて「人と仲睦まじくする」様子から「睦月」とされています。
その他にも、稲の実をはじめて水に浸す月で、「実月(むつき)」が転じたとする説や、元になる月で、「もとつき」が「むつき」に転じたとする説があるようです。
新しい1年の始まりの月です。
古来、新年は年神様が運んできてくれると考えられていました。
「あけましておめでとう」という挨拶も、無事に年神様と新年をお迎えできた喜びとめでたさから生まれたお祝いの言葉だといわれています。
さらに、先人たちは、年神様と共に、新年に行う様々な「はじめ」も大切にしてきましたので、あらゆる「はじめ」に、1年の繫栄と招福を願う行事が多い月です。
古くから伝わる風習や行事を暮らしに取り入れることで、この1年の新たな目標に向かっていくという思いも、より一層強くなるのではないでしょうか。
(※睦月の「ならわし料理」はお休みさせていただきます。)

■1月1日
【正月・元日】
「正月」は、1年の始まりに年神様(としがみさま)を迎える行事のことです。
年神様は、歳徳人(さいとくじん)とも呼ばれ、新たな年に福徳をもたらしてくれる神様。
元旦に各家庭にやって来て、人々の1年の健康や多くの実りを授けてくれるといわれています。
すす払いや正月飾りなどの年末行事に加え、元日を迎えると、初詣に行ったり、おせち料理を食べ、お供えした鏡餅を食べる鏡開きなど、多くの正月行事が続きますね。
毎年迎えているお正月のことですからご存知だと思いますが、いわれや本当の意味などを少し掘り下げて知ると、振舞いが違ってくるかもしれませんよ。
【門松・注連飾り(しめかざり)】
元日に年神様を迎えるために飾る正月飾り
※詳しくは、『ことごと綴り《師走》』をご覧ください。
【鏡餅】
年神様へのお供え物。
※詳しくは、『ことごと綴り《師走》』をご覧ください。
【初日の出】
新年、最初に昇る太陽のこと。

初日の出を拝みながら、1年の健康を祈ります。
年神様は、元旦の日の出とともにやってくるといわれていたためです。
【若水(わかみず)】
元日の朝に初めて汲む水のこと。
命が若返るとされる、縁起の良い水。この水を頂くと、1年の邪気を払うとも考えられています。
神棚にお供えした後、飲んだり料理に使ったり、書初めの墨をすったりします。
【お屠蘇(おとそ)】
年の初めに邪気を払い、無病息災を願って飲む薬酒。

元々中国から伝わった薬酒で、山椒や桔梗、肉桂(にっき)、丁子(ちょうじ)などの薬草を調合して、お酒やみりんに浸して作ります。
現在では、ドラッグストアなどで入手できる「屠蘇散(とそさん)」を日本酒やみりんに浸して作ることができますよ。
おせちをいただく前に、目上の者から順に3回ずつ飲む。
【おせち料理】
新年を祝って年神様に供える料理。
「御節供(おせちく、おせっく)」の略で、季節の変わり目である五節句に神様に供える料理を指しました。
大晦日のうちに仕上げて三が日に食べるのは、年神様が静かに過ごせるよう、この期間は家事を控えてできるだけ音を立てないようにするためなんだそうですよ。
江戸時代に一般大衆に広がることで、日持ちする料理をお重に詰めるという、現在の形になったといわれています。
それぞれの食材には人々の願いが込められています。
・数の子:子孫繁栄
・田作り:五穀豊穣
・黒豆:まめに元気に働けるように
・蓮根:将来の見通しが良くなる
・鰤(ぶり):出世祈願
・昆布巻き:よろ「こぶ」の語呂合わせ
・きんとん:金運上昇
・伊達巻き:反物の形で、着るものに困らない
・里芋:子孫繁栄
・海老:腰が曲がるまで長生きできる
神様が召し上がったお下がりをいただき、神様と同じものを食べることでその力を分けてもらい、1年の加護を願います。
【祝い箸】
一方を人が、一方を神様が使うとされる、両端が細くなっている三が日に使う箸。

大晦日に家長が家族の名前を箸袋に書いて神棚に供え、三が日にこの箸を使って食事をします。
食べ終わるごとに洗い、また箸袋に納めて使用します。
【お雑煮】
年神様にお供えした餅と野菜や肉などを煮込んで作る料理。
元旦に年神様やその年の恵方の神様にお供えしたのち、お下げしたものの恩恵にあずかるのが本来の頂き方だそうです。
【初詣】
元日(新年最初の日)に氏神様やその年の恵方(吉の方角)になる寺社仏閣を参拝すること。
松の内(1月7日若しくは1月15日)までにするというのが習わしです。
できれば、まずは住んでいる地域の神社に新年の挨拶をしましょう。
【お年玉】
新年のお祝いとして大人が子供に贈る金品のこと。
昔は誕生日ではなく、正月に1つ歳を重ねる「数え年」が一般的で、その際に年神様から贈られたとされるのが「新しい魂」=「年魂(としだま)」でした。その言い伝えの元に、年神様の魂を分けて頂く意味で鏡餅を家族に配ったことが、始まりといわれています。
【獅子舞】
獅子頭をかぶって舞う民俗芸能。

悪霊払い、疫病退治を祈るもので、獅子に頭を嚙まれるとその年は無病息災で過ごせるといわれています。
【初夢】
一般的には元日から2日の朝にかけて見る夢のこと。
吉夢として「一富士、二鷹、三茄子(なすび)」があげられますね。
富士は立身出世、鷹は開運、茄子は財や子を成す、めでたいものの象徴です。
宝船の絵を枕の下に敷いて寝ると吉夢が見られるという言い伝えもあります。
もし、凶夢を見てしまった場合は、「枕を裏返す」「“獏(ばく)食え”と3回唱える」などのおまじないがあるそうですよ。
【書初め】
年が明けて初めて書や絵などを書くこと。

平安時代の宮中行事で、仕事始めの2日に、若水で墨をすり、恵方に向かって筆を運び、名歌や名分を書いた習慣が起源とされています。
■1月6日
【小寒(しょうかん)~二十四節気】
(※「小寒」について詳しくはこちら)
■1月7日
【七日正月・人日(じんじつ)の節句・松納め】
1月7日は七日正月と呼ばれ、それをお祝いする行事を人日の節句といいます。
雛祭りや七夕などと並ぶ「五節句」のひとつで、別名「七草」「七草の節句」「七草の祝い」などとも言われます。

元々は中国から伝わったものだそうです。
「正月一日は鶏を、二日には狗(いぬ)、三日には羊、四日には猪、五日には牛、六日には馬、七日には人、八日には穀(こく)」を占い、それぞれの日には、対象となる動物を殺さずに大切にする風習がありました。
7日は「人」を大切にする日で、七種類の薬草を温かい汁もので食べるという習慣もあったそうです。
一方、日本にも、古くから若葉を摘んで新しい生命をいただく「若菜摘み」という風習があり、それらが融合して七草粥を食べる習慣が定着していったのだそうです。
1月7日の朝に春の七草(セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ)の入った七草粥を作り、ようやく芽吹いた春の七草の「気」をいただき邪気を払い、その一年の無病息災を願って食べましょう。

セリ・・・・・・・芹
ナズナ・・・・・・薺 :別名「ペンペングサ」
オギョウ(ゴギョウ)・御行・御形 :「ハハコグサ・母子草」のこと
ハコベラ・・・・・繁縷・蘩蔞 :「ハコベ」のこと
ホトケノザ・・・・仏の座 :現在の「タビラコ・田平子」
スズナ・・・・・・菘・菁・鈴菜:「カブ・蕪」のこと
スズシロ・・・・・蘿蔔・清白:「ダイコン・大根」のこと
これは冬に不足しがちなビタミンCを補い、また祝い酒で弱った胃を休める為とも言われています。
ちなみに、五節句の特徴としては、
お正月の七草
3月の上巳(じょうし/じょうみ)の桃
5月の端午(たんご)の菖蒲
7月の七夕の竹
9月の重陽(ちょうよう)の菊
というように、季節の草木に彩られていて、やはり先人たちは動植物から季節を感じることが多かったことがうかがえますね。
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