毎月1日(若しくは前月末)に季節ごとの「ならわし」について綴っていく予定の「ことごと綴り」。
こちらでは同時に、その「季節のならわし」にまつわる「ならわし料理」のオリジナルレシピをご紹介します。
「ことごと綴り」とご一緒にお楽しみくださいませ。
伝え、受け継がれてきた「ならわし」を「食」という日々の暮らしの時間の中で、少しでも楽しく取り入れていただけたら嬉しいです。

「ならわし料理」と題してご紹介するレシピは、昔ながらの伝統的な行事食を、今の暮らしに寄り添ったスタイルにアレンジしたオリジナルレシピです。
今月の「ならわし料理」のテーマは「十三夜(じゅうさんや)」です。
前回のことごと綴りで「十五夜」のあとに「十三夜」があることに少しだけふれましたが、旧暦の9月13日に見える少し欠けた月の見える夜のことをいいます。
2022年は10月8日(土)が「十三夜」です。

十三夜は、稲作の収穫を終える地域も多いことから、秋の収穫に感謝しながら、美しい月を愛でることをいいます。
十五夜が中国から伝わった風習に対し、十三夜は日本固有のもの。
十三夜のお月見の始まりについては、諸説ありますが、平安時代に醍醐天皇が、月見の宴を催し詩歌を楽しんだのが始まりではないかという説が代表的です。
10月に入るとますます空気が澄んできて、夜空も美しさを増します。
満月ではないものの、十五夜に次いで、月が美しいとされてきた十三夜。
現代では、少し馴染みが薄くなってしまったようですが、平安時代には詩を詠む月見の宴が開かれたほど歴史は古く、恵みの秋を満喫する一夜だったのかもしれません。
十五夜と十三夜を合わせて「二夜の月(ふたよのつき)」と呼ぶそうです。
どちらも、お月見を楽しむことを大切にしており、どちらか一方しか見ないことを「片見月(かたつきみ)」・「片月見」と呼び、あまり縁起が良くないそうですよ。
十五夜を堪能した方は、この十三夜にもぜひ、月を眺めてみてくださいね。
先人たちが、月を愛でながら、自然の恵みに対する感謝の気持ちを大切にしてきたというその風習は、宇宙の中に存在する月と自分たちのいる地球という壮大なスケールで自然を感じていて、よく考えてみるととても神秘的だと思いませんか?
現代の、日々つい急いてしまう日常の時間の中で、ふと不変的なものや不変であるべきものを思い出して噛みしめてみる、そんなことのきっかけになるよう、昔ながらの風習に倣ってみるのは大切なことなのかもしれませんね。
十五夜は収穫時期だった里芋を供えることが多く「芋名月」と呼ばれますが、十三夜は豆や栗を供えるので「豆名月」「栗名月」ともいいます。
また、十五夜に次いで美しく、十五夜の後に巡ってくるので、「後(のち)の月」とも呼ばれます。
お月見では、秋の収穫に感謝するため、お月様にお供えをします。
旬を迎える栗やブドウ、もちろん、名前の由来にもなっている枝豆、大豆をお供えするのも良いですね。

合わせて、お月見に欠かせないのはススキです。
ススキの鋭い切り口は、“魔除け”や、茎の内部が空洞のため“神様の宿り場になる”と信じられていたため、古くから神様の依り代(よりしろ)と考えられていました。
悪霊や災いなどから収穫物を守り、翌年の豊作を願う意味が込められているのだそうです。
そして、なんといっても“月見団子”ですね。
十三夜の場合は、13個のお団子を用意し、1段目に9個、2段目に4個積んで並べるのが基本スタイルだそうですよ。
今回は、「豆名月」にちなんで、豆の料理をお月見バージョンにアレンジした、ノブさんのオリジナルレシピをご紹介します!
「豆名月」にはお団子や豆をお供えして食べるというならわしがありますが、日常の食事に豆を取り入れ、ちょっと月見風にアレンジしてみたりして、「豆名月」を気軽に楽しむというのはいかがでしょうか。

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大豆の月見つくね
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肉だねに大豆をたっぷり加え、隠し味に味噌を加えたつくねです。
ミニサイズにするとお子さんでも食べやすいですし、月見酒のおつまみにもいいですね。
今回は「豆名月」のお料理ということで、月見をイメージした盛り付けにしてみました。


《材料》2〜3人分(直径約5cmサイズ12個分)
・鶏ひき肉:150g
・蒸し大豆:100g(水煮でもよい)
・玉ねぎ:1/3個
〈A〉卵白:1個分
〈A〉生姜(すりおろし):大さじ1
〈A〉塩:少々(小さじ1/8)
〈A〉片栗粉:小さじ2
〈A〉味噌:小さじ1
・ごま油:大さじ1
・水:大さじ2
〈B〉醤油:大さじ2
〈B〉みりん:大さじ1
〈B〉酒:大さじ2
・豆苗:50g(約1/3パック)
・まいたけ:30g
:しめじ:30g
・白いりごま:適量
・卵黄:1個分
《つくり方》
①蒸し大豆は、熱湯で1分ほど茹でてザルにあげ、水けをきって熱いうちにマッシャーなどでつぶします。
玉ねぎはみじん切りにします。
②〈B〉のたれ用調味料を合わせておきます。
③ボウルに鶏ひき肉、①の大豆と玉ねぎ、〈A〉を入れ、粘りが出るまでよく混ぜます。
12等分にして平たい丸型に形を整えます。(手に水をつけると成形しやすいです)
④大きめのフライパンにごま油を熱し、③を中火で焼きます。焼き色がついたら上下を返し、水を加えてフタをして弱火で3分ほど蒸し焼きにします。

⑤フタをとって中火にし、水分を飛ばします。あいたところに豆苗、まいたけ、しめじを入れて軽く炒めます。〈B〉を合わせた調味料を加え、全体にからめながら中火で3〜4分煮詰め、とろみがついたら火を止めます。
⑥つくねを2個ずつ串にさし、白いりごまを振りかけます。器につくねを重ねて盛り、豆苗、まいたけ、しめじ、卵黄を添えます。つくねに溶いた卵黄をつけていただきます。
*写真は、豆苗を原っぱ、まいたけとしめじはススキ、卵黄は月に見立てて盛り付けしています。
〈メモ〉
*大豆のつぶし具合はお好みで調整してください。ペースト状にしても、粒を残してもよいです。
*大豆をひよこ豆や金時豆などにしても作れます。
*七味唐辛子を振りかけたり、千切りした青じそや大根おろしをのせても美味しいです。
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金時豆と生姜のご飯
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月見には栗ご飯を食べる方も多いと思いますが、十三夜は「豆名月」ということで、豆ご飯はいかがでしょうか。
金時豆のホクホクとした食感と生姜の風味がきいたさっぱりとした味わいが楽しめます。
金時豆を一緒に炊くとご飯がほんのり色づくので、シックなイメージの秋らしい豆ご飯になりますよ。


《材料》4人分
・金時豆(乾燥):50g
・米:2合
・生姜:30g
・水:米の1.2倍
・塩:小さじ1
・酒:大さじ1
・ごま塩:適量
《つくり方》
①金時豆は洗って、豆の4〜5倍の水に8〜10時間ほど浸水して戻しておきます。
米は洗って、分量の水に30分〜1時間浸水しておきます。
生姜は千切りにします。

②炊飯器に米、米を浸水した水、塩、酒を入れて軽く混ぜ、戻した金時豆、千切り生姜を入れて炊きます。

③炊き上がったご飯を茶碗に盛り、ごま塩を振りかけます。
〈メモ〉
*ご飯を炊くときの水を金時豆の戻し汁にすると、お赤飯のような濃い色味のご飯に炊き上がります。
*他の豆(大豆、黒豆、あずき、虎豆など)に代えて豆ご飯を炊いてもいいですね。
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