
「海のミルク」や「海のチーズ」ともいわれる、濃厚でクリーミーな牡蠣。
旬の時期は身がふっくらして、旨み成分が最大になるといわれています。
オイスターソースを加えて牡蠣の旨みをダブル使いしたオイル漬けは、旬の最も美味しい時期にぜひ作っておきたい保存食。
2週間ほど保存ができて、時間とともに味がなじみ、その美味しさを長く楽しむことができるので、多めにつくっておくのもおすすめです。
お酒のつまみにはもちろん、いろいろな料理に活用できてとっても便利。
漬けたオイルも旨みたっぷりでアレンジが利きますので、残さずオイルごと使いましょう。

《材料》作りやすい分量(約600ml容量の保存びん1本分)
・牡蠣(加熱用):500g
・酒:大さじ2
・オイスターソース:大さじ1
・醤油:小さじ1
・にんにく:2片
・赤唐辛子:1本
・オリーブオイル:適量
・黒こしょう(ホール):5〜7粒
・ローリエ:2枚
・タイム:適量(あれば)
・3%濃度の塩水〈牡蠣の下処理用〉:適量(水1Lに塩大さじ2)
《つくり方》
①3%濃度の塩水が入ったボウルに牡蠣を入れ、身をくずさないようにふり洗いして、水を2回ほど取り替えながら汚れをすすぎます。(*真水で洗うと、浸透圧の関係で牡蠣のうま味が抜けてしまいます。)
水きり後、ペーパータオルなどで挟むように押さえて、丁寧にしっかりと水気を取ります。
②にんにくは芯を取って輪切り、赤唐辛子はヘタと種を取って小口切りにします。
③フライパンにオイルとにんにくの半量を入れて加熱し、にんにくの香りが出たら、牡蠣を入れて中火で加熱します。すぐにぶくぶくと泡立ってきて身がプリッと膨らんできます。酒を入れてアルコールと水分を飛ばします。牡蠣の身がくずれないように、途中で上下を返してください。
気泡がおさまり牡蠣に火が通ったら、身を縮ませないように牡蠣を一旦あげます。
④フライパンにオイスターソースと醤油を入れて、焦がさないように中火で軽く煮詰めます。
牡蠣を戻し入れて全体にソースを絡めながら1〜2分煮詰めます。

⑤余熱で牡蠣に火が通りすぎて牡蠣がかたくならないように、バットに移して広げ粗熱をとります。
⑥清潔な保存容器に⑤、にんにくの残り半分、赤唐辛子、ローレル、黒こしょう、タイム(あれば)を一緒に入れ、全体がしっかり浸かるくらいまでオリーブオイルを注ぎ入れます。
牡蠣がオイルに浸かった状態をキープして冷蔵庫で保存してください。

〈保存・食べ頃〉
・牡蠣がオイルに浸かった状態にし、冷蔵庫で2週間ほどが保存の目安です。
・つくってすぐでも美味しく食べられますが、2日〜1週間後がおすすめです。日が経つにつれ、牡蠣がぷっくりハリを保ちつつ身が締まり、旨みが凝縮していきます。オイスターソースやにんにくなどの風味がほどよく牡蠣になじんで、まろやかな味わいになりより美味しくなります!
・冷蔵庫で保存するとオイルの表面が白く濁って固まることがありますが、常温で少し置くと液体に戻ります。
〈メモ〉
・牡蠣は「加熱用」がよいです。「生食用」は指定された海域で獲れた牡蠣や、減菌洗浄が行われているもの。「加熱用」はそれ以外の牡蠣で、含有成分が豊富な海域で育っているので、生食用よりミネラルなどの栄養を多く含み、味が濃くうまみが強いといわれています。
・牡蠣の洗い方は、塩水の他に、片栗粉や大根おろしを使ったりする方法もあります。また、臭みが気になる場合は塩水にレモン汁を加えたりしてもよいです。
・牡蠣は余分な水分をしっかり飛ばすことがポイントです。味がよくなじみ、ぷりっとした食感に仕上がります。
・牡蠣にオイスターソースを加えることで、旨味が倍増し香ばしさが加わって、すっきりとした味わいになります。オイスターソースがなければ、醤油の量を増やして加えてもOKです。
・お好みで、ローズマリー、タイム、コリアンダー(ホール)などのスパイスやハーブを加えたり、オイルをごま油、グレープシードオイル、米油、サラダ油などに代えたりして、アレンジしてもよいです。
〈応用メニュー〉
・マリネ、サラダ(漬けたオイルをドレッシングに)
・刻んで豆腐にのせる。オイルごとバゲットにのせる。
・パスタ、グラタン、リゾット、ココット。
・野菜やハーブと一緒にグリル。炒め物。
・炊き込みごはん、チャーハン、焼きそば。
・刻んでオイルと一緒にドレッシングやソースに。
春の保存食『牡蠣のオイル漬け』を使ったアレンジレシピ

春の保存食『牡蠣のオイル漬け』を使ったアレンジレシピ

旬の食材 のこと
『牡蠣』

牡蠣は世界中に100種類以上が分布していますが、日本で生食用として出回るのは、季節によって異なり、主に真牡蠣(マガキ)と岩牡蠣(イワガキ)の2種類です。
真牡蠣と岩牡蠣ともにイタボガキ科マガキ属の2枚貝で、ごつごつして波打った殻の形状が印象的。
養殖物が大半である真牡蠣は、夏に産卵するので、暑い季節は身が痩せておいしくありません。
最も美味しくなるのは産卵の準備に入る3~4月頃で、身が栄養を蓄えふっくら太って、グリコーゲンやアミノ酸などの牡蠣のうま味成分が最大となり、味もとっても濃厚クリーミーになります。
産地によって水揚げ期間が異なりますが、12月~翌3月がもっとも市場に出回る最盛期です。
スーパーや鮮魚店で並んでいるのはほとんどがこちらの種類。
養殖されているので旬の時期はもちろん、冷凍加工されているものであれば一年を通して楽しむことができます。
真牡蠣の身はしっかりしていて、加熱するとプリっとした食感を楽しめるのが魅力。
大きさは岩牡蠣よりも小ぶりですが、ミルキーで濃厚な味わいは、真牡蠣と岩牡蠣ともに変わりありません。
旨味たっぷりで栄養価が高いため、「海のミルク」と呼ばれています。
岩牡蠣の旬は、夏場の6月〜9月頃です。
天然と養殖いずれの方法で育てられていますが、一般的には天然物が多く出回ります。
そのため、その年の市場価格にもよるものの、基本的には養殖の真牡蠣より高価な傾向にあります。
天然物が多い岩牡蠣は日本海側でよく獲れ、少し沖合の20mまでの深い岩礁域に生息しています。
冷たい海水と敵から身を守るために、真牡蠣よりも殻が大きく厚みがあるのが特徴です。
ちょうど大人の手のひらくらいの大きさですね。
でも、4~5年経過した岩牡蠣には、1kgを超える大物も見られるとか?!
身もひと口で食べることができないほど大ぶりで、さらに濃厚でクリーミー。
ほんのり苦味や渋味も感じる味わいから、「海のチーズ」と呼ばれ、夏の牡蠣として珍重されることが多いです。
古くから生牡蠣を食べていたヨーロッパには、「Rのつかない月は牡蠣を食べるな」という言葉があります。
200年以上もまえのフランスのことわざです。
「Rのつかない月」とは、英語表記の5月(May)~8月(August)の時期のことです。この時期は、生牡蠣を食べてはいけないとされました。
反対にRのつく月である9月(September)~翌4月(April)は、安心して食べられるということです。
冷蔵技術がなかった当時、夏場に腐敗や細菌の増殖が原因で、食中毒が頻発したことから生まれたといわれています。今では、冷蔵技術や流通網の発達で、食中毒を起こす可能性は昔と比べて格段に少ないですので、あまり当てはまらないのかもしれませんね。
でも、水質管理を怠って細菌が繁殖したり、有毒プランクトンによる一過性の貝毒を持ったりすることもあるそうですから、牡蠣を購入する際は、信頼できるお店や業者から購入するようにしてください。
牡蠣といえば「あたる」というイメージを持っている方も多いですよね。
そもそも牡蠣にあたるケースは、ノロウイルスや腸炎ビブリオなどのウイルスや菌が原因となっています。
ノロウイルスは冬場にピークを迎え、腸炎ビブリオは生息する海水の温度が上がる夏場に発生しやすくなります。
海水経由でウイルスを取り込んでしまった牡蠣を、生または加熱が不十分な状態で食べた場合、食後1~2日のうちに症状があらわれるといわれています。
どんなに新鮮な牡蠣でもノロウイルスが付着している可能性はあるので、十分注意が必要です。
また、牡蠣の食べ過ぎは食中毒のリスクを高めるだけでなく、亜鉛やプリン体の過剰摂取を引き起こす可能性があるのだそうです。
亜鉛の耐容上限量は1日35~45mg、プリン体の推奨摂取量は1日400mg以下です。
牡蠣1個(約20g)あたりの亜鉛含有量は約2.8mg、プリン体含有量は約37mgであることを踏まえると、安心して食べられる牡蠣の量は1日10個ほどが目安になると考えられます。
美味しいからといって、食べ過ぎには注意しましょう。
牡蠣は栄養価の高い食品のひとつです。
牡蠣は1個(約20g)あたり約12kcalと低カロリーなのに、ビタミンやミネラルを豊富に含む栄養たっぷりの食材です。
特に、ビタミン類ではビタミンB12、ミネラル類では亜鉛や鉄を多く含みます。
牡蠣が魚介類でトップクラスの含有量を誇る亜鉛は、体内のタンパク質の合成や酵素・ホルモンの分泌に必要不可欠なミネラルです。
牡蠣に含まれる鉄や亜鉛は、体内に吸収される割合が15~30%ほどと非常に低いのも特徴です。
そのため、鉄や亜鉛の吸収率をアップさせるビタミンCやクエン酸がたっぷりの食材と一緒に食べるのがポイントなのです。
生牡蠣や牡蠣フライなどは、レモン・すだち・かぼすなどの柑橘類をキュッと絞ってからいただきましょう。
4月 【和風月名 卯月】
【二十四節気・七十二候】についてはこちら
【春の保存食レシピ】卯月(4月)《牡蠣のオイル漬け》
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